「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則
(英語:Global Principles On National Security And The Right To Information )」
通称: ツワネ原則
日本語訳:日本弁護士連合会
※未定訳※一部字句修正等を行う可能性があります。
本原則は、70カ国以上の500人を超える専門家との2年以上におよぶ協議を経て、22の団体によって起草され、2013年6月12日に発表された。本原則は、起草の過程で重要な会議が行われた南アフリカ共和国の都市ツワネの名を冠している。 2013年6月12日 目次 序 前文 語句の定義 第1章 一般的諸原則 第2章 国家安全保障を理由に秘匿され得る情報と開示さ れるべき情報 第3章A 情報の機密指定及び機密解除に関する規則 第3章B 情報請求の扱いについての規則 第4章 国家安全保障と情報への権利の司法的側面 第5章 安全保障部門を監視する機関 第6章 公務関係者による公益的開示 第7章 公衆への情報暴露に対する制裁又は制約行為の制限 第8章 結びの原則 付録 A パート ナー機関 |
序 本原則は、国家安全保障上の理由により情報の公開を控えたり、そのような情報の暴露を処罰したりする国家の権限に関わる法津又は規定の起草、修正又は施行に携わる人々に指針を提供するために作成された。 本原則は、国際法(世界の一部地域のみを対象とする国際法を含む)及び国内法、各種の基準、優れた実践並びに専門家の論文等に基づいている。 本原則は、国家安全保障上の理由による情報非公開について記述しており、他のあらゆる非公開理由を対象としたものではない。しかし他の理由で情報へのアクセスを制限する場合でも、当局は少なくともこの原則に示された基準を満たさねばならない。 本原則は、70カ国以上の500人を超える専門家との協議を経て、22の組織及び学術センター(付録にそのリストが記載されている)によって起草された。会議はオープン・ソサエティー・ジャスティス・イニシアティブが進行役を務めて世界各地で14回にわたって行われ、表現 / メディアの自由に関する特別報告者4人及びテロ対策と人権に関する特別報告者1人からも意見を得た。この5人の特別報告者は以下の通り。 | |
フランク・ラ・リュ: | 言論と表現の自由に関する国連特別報告者 |
ベン・エマソン: | テロ対策と人権に関する国連特別報告者 |
パンジー・トゥラクラ: | 表現の自由と情報へのアクセスに関する人及び人民の権利に関するアフリカ委員会特別報告者 |
カタリナ・ボテロ: | 表現の自由に関する米州機構特別報告者 |
ドゥニャ・ミヤトビッチ: | メディアの自由に関する欧州安全保障協力機構(OSCE)代表 |
本原則が起草された背景と理論的根拠 国家安全保障と国民の知る権利は、しばしば、対立するものとみなされる。政府は国家安全保障上の理由から情報を秘密にしておきたいと望み、一方で国民には公権力が保有する情報に対する権利がある。この2つの事柄の間には、時として緊張関係が存在する。しかしくもりのない目で近年の歴史を振り返ると、正当な国家安全保障上の利益が最大に保護されるのは、実際には、国の安全を守るためになされたものを含めた国家の行為について、国民が十分に知らされている場合だということがわかる。 国家の行為を国民が監視することができ、情報にアク セスすることができるようになれば、公務員の職権乱用を防ぐだけでなく、人々が国の方針決定に関与できるようになる。つまり情報へのアクセスは、真の国家安全保障、民主的参加、健全な政策決定の極めて重要な構成要素である。そして、人権の行使が完全に保障されるためには、ある一定の状況下では、正当な国家安全保障上の利益を守るために情報を秘密にすることが必要な場合があり得る。 多くの国において、ひとたび国家安全保障が持ち出されると、司法が政府の主張に対して極めて従順になり、独立性をほとんど失ってしまうという事実があり、このことが、国家安全保障と国民の知る権利のバランスを正しく保つことをますます困難にしている。国の安全に対するほんのわずかな脅威の提示や、脅威があるという政府の単なる主張があれば、情報への権利や、通常の証拠規則や被告人の権利に例外を設ける治安法を持つ国が多く、そのような法律も 政府への追従に拍車をかけている。国の安全が脅かされていると政府が過剰に主張すれば、政府の暴走を防ぐために作られた主なしくみ(裁判所の独立、法の支配、立法府による監視、メディアの自由、開かれた政府)の機能を大幅に損ねてしまうおそれがある。 本原則は、上述したような積年の難題に応えるものであり、また、近年かなり多くの国が、情報の非公開制度とその関連法を作成・修正し始めているという現実に対応するものである。一方このような政府の動きには、いくつかの理由がある。もっとも大きな理由は、ベルリンの壁の崩壊以降、情報へのアクセスに関する法律の制定が急速に進んできていることだろう。その結果、この原則が発表された時点で、95カ国の52億を超える人々が(実際にはそうでなくても、少なくとも法律上では)情報にアクセスする権利を持っている。こうした国の人々は、情報が秘密にされてよいか、あるいは、どのような状況下なら情報が秘密にされてもよいかという問題に(大抵の場合、初めて)取り組んでいる。他にも、ますます多くの国で秘密保護法が起草されている理由としては、政府によるテロやテロの脅威への対策、そして民主主義への移行過程で、秘密主義を法律で規制することへの関心が高まったことなどがある。 |
前文 この原則の起草に関わった組織及び個人は、 国家が保有する情報へのアクセスは全ての人の権利であり、従ってこの権利は例外規定の少ない厳密に定められた法律によって、また独立した裁判所、国会の監視機関及びその他の独立機関による権利の監視のための法律によって保護されねばならないことを想起し、 国家安全保障の見地を含め、国家が特定の情報を秘匿することによる正当な利益があり得ることを認識し、情報の公開と非公開の間に適切な基準を設けることが民主主義社会にとって極めて重要であり、またその安全、進歩、発展及び福祉並びに人権と基本的自由の完全な享受のために必要不可欠であることを強調し、 人々が政府の行動を監視し、民主主義社会に十全に参加することを可能にしようとするならば、国家安全保障に関連する情報を含め、公権力が保有する情報へのアクセスが絶対必要であると確信し、 この原則が、当局が保有する情報に人々がアクセスする権利及びその他の人権に関する国際法・基準、(とりわけ国際及び国内法廷の判決に現れているように)徐々に進化しつつある国家の慣行、国際社会によって認められている法律の一般原則、及び専門家の記述に基づいていることを明記し、 世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、人及び人民の権利に関するアフリカ憲章、米州人権条約、欧州人権条約、公文書へのアクセスに関する欧州評議会条約の関連条項に留意し、 さらに、米州人権委員会の表現の自由に関する原則宣言、情報へのアクセスに関する米州モデル法、アフリカにおける表現の自由に関する原則宣言、情報へのアクセスに関するアフリカモデル法に留意し、 言論・表現の自由に関する国連特別報告者、メディアの自由に関する欧州安全保障協力機構(OSCE)代表、及び表現の自由に関する米州人権委員会特別報告者の2004年共同宣言、以上3者及び表現の自由と情報へのアクセスに関する人及び人民の権利に関するアフリカ委員会特別報告者による2006年、2008年、2009年、2010年の共同宣言、国連及び米州特別報告者のウィキリークスに関する2010年12月の共同声明、2010年にヴェニス委員会で採択されたテロ対策及び人権に関する報告書を想起し、 さらに、1995年にアーティクル19が招集した専門家グループによって採択された国家安全保障、表現の自由及び情報へのアクセスに関するヨハネスブルグ原則、国家安全保障研究センター(CNSS)及びポーランド・ヘルシンキ人権財団によって1997年に作成された立憲民主主義における安全保障サービスの監視と説明責任原則を想起し、 一定の状況下で、企業からの、又は企業に関連する情報へのアクセスが決定的に重要であることを認めたものとして、情報へのアクセスに関するアフリカモデル法、ビジネスと人権に関する国連指導原則(ラギー・フレームワーク)、武器貿易条約、経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針、武力紛争における民間軍事・警備会社の行動に関する国家の適切な国際法上の義務及びグッドプラクティスに関するモントルー文書などに含まれる国際原則があること、及びそれらの原則の一部は、国家安全保障部門内で運営されている民間軍事・警備会社が特定の情報を公開する必要があることに明確に言及していることを明記し、 この原則が、国連人権理事会の要請で、2010年、当時テロ撲滅における人権及び基本的自由の促進及び保護に関する国連特別報告者であったマーティ ン・シェイニンが発表し「情報局とその監視のための法的制度的枠組みに関するグッドプラクティス」で言及された、情報収集、個人情報の管理又は情報共有の実際の基準には言及していないことを明記し、 国連安全保障理事会決議第1373号によって要求された国家間の効果的な情報共有の重要性を認識し、 さらに、国家安全保障の名において設けられた公衆への情報公開や独立監視への障害が、違法な、不正な、及び虚偽の行為が発生しそれが暴露されないリスクを高め、プライバシーその他の個人の権利の侵害が国家安全保障上の秘密という覆いの下でしばしば発生することを認識し、 過度の機密指定は、政府関連機関や同盟国の間での情報共有を妨げ、正当な秘密の保護を不可能にし、多くの不要な情報の中から重要な情報をみつけることを不可能にし、複数の機関が情報を重ねて収集することになり、安全保障担当者に過重な負担をかけるなど国家安全保障にとって損失となることを懸念し、 この原則が「公衆の」知る権利に焦点を当てていること、また、公衆の知る権利に密接に結びついている範囲のみにおいて、被拘禁者、人権侵害の犠牲者及びその他の強く情報を求める人々の知る権利に言及していることを強調し、 国家安全保障の見地からは非公開にすべきでない特定の情報が、それにもかかわらず、例えば国際関係、司法手続の公平性、訴訟人の権利、個人のプライバシーなど、国際法に認められた様々なその他の理由で非公開にされる可能性があるが、それは、その情報の秘密性を維持することによる公共の利益が、情報にアクセスすることによる利益よりも明らかに大きい場合に限られるという原則によると認識し、 政府機関、立法機関、監督機関、その他の公的機関、法律起草者、裁判所、その他の監視機関、及び国家安全保障と知る権利の間にある最も難解な問題に関わる市民団体、とりわけ人権と民主的説明責任の尊重に携わる機関・人々に対して実際的な指針を提供することを希望し、 普遍的な価値と汎用性を持つ原則を作り上げるよう努め、 公開することによる公共の利益と、正当な国家安全保障上の利益保護のために秘密にする必要性のバランスを取るに当たって広く様々な困難に各国が直面すること、また、原則が普遍的である一方で、その実際の適用は、司法制度の多様性など各地の現実に応じたものであり得ることを認識し、 原則1に定められた知る権利の完全な実現を漸次達成することを目指し、国家、地域、国際レベルの適切な機関がこの原則を流布・議論する措置を取り、承認・採択し、さらにその実行も同時に、または実行のみを、可能なかぎり行うよう勧告する。 |
語句の定義 この原則においては、文中でとくに指定されない限り、以下のように定義する。 「国家安全保障部門内の企業」とは、 何らかの取引や事業を国家安全保障部門の中で行っている、又は行ってきた法人を指す。ただし、サービス、設備、人員又は商品(例えば軍需品、器材、情報などであるが、これに限定されるものではない)を提供する請負業者又は供給会社のみを指す。これには、民間軍事会社及び民間警備会社(PMSCs)も含まれる。しかし非営利又は非政府組織として設立された法人は含まれない。 「独立した」とは、 組織上、財政上、及び運営上、全ての安全保障部門を含む行政当局からの影響、指導、管理を受けないという意味である。 「情報」とは、 物理的特性に関わらず全ての記録資料の原本又は複写、及び全ての有形無形の資料を指し、それが保有されている形式や媒体を問わない。この中には、記録、通信、事実、意見、勧告、覚書、データ、統計、書籍、描画、計画、地図、図表、写真、視聴覚記録、記録文書、電子メール、日誌、標本、模型、及びあらゆる電子形式で保有されたデータが含まれるが、これらに限定されるものではない。 「公共の利益となる情報」とは、 公衆に関連のある、又は公衆の役に立つ情報のことであり、単に個人的な利益のある情報のことではない。そしてその情報が公開されることが、例えば、政府の活動を公衆が理解するために有用であるなどの理由で「公衆のため」であるものを指す。 「正当な国家安全保障上の利益」とは、 その利益の真の目的と主たる効果が、国際法・国内法に沿って国家の安全を守ることにある場合を指す。(その隠匿が正当な国家安全保障上の利益を保護するために必要である可能性がある情報のカテゴリーは原則9に定める)国家安全保障上の利益は、その本来の目的と主たる効果が国家安全保障に関係のない利益を守るため、例えば政府や官僚を恥辱又は悪事の暴露から守るため、人権侵害、その他のあらゆる法律違反若しくは公共機関の機能に関する情報の隠ぺいのため、特定の政治的利益、党派又はイデオロギーの強化又は維持のため、若しくは合法的な抗議行動の抑圧のためなどであった場合、正当ではない。 「国家安全保障」という語句は、この原則の中では定義されていない。原則2には、「国家安全保障」は、民主主義社会の必要に応じた形で、国内法で厳密に定義されねばならないという勧告がある。 「公権力」とは、 安全保障部門当局を含む政府当局及び憲法・法律によって設置された当局の全階層における行政、立法、司法部局の内部にある全ての機関、及び政府が所有又は管理する、又は政府の代理を務める非国家機関を指す。また「公権力」には、公共の機能やサービスを実行する、又は相当額の公共基金や公的給付金によって運営される民間その他の主体が含まれる。ただし、こうした機能の実行、サービスの提供又は公共基金又は公的給付金の使用に関連する部分のみを指す。 「公務関係者」又は「公務員」とは、 安全保障部門を含め当局の職員、請負業者、下請け業者である者、又は過去にそうであった者を指す。さらに、「公務関係者」又は「公務員」とは、政府が所有又は管理する、又は政府の代理を務める非国家機関に雇用されている者、公共の機能やサービスを実行する、又は相当額の公共基金や公的給付金によって運営される民間その他の主体の従業員を指す。ただし、こうした機能の実行、サービスの提供又は公共基金又は公的給付金の使用に関連する部分のみを指す。 「制裁」とは、 名詞として使用される場合、刑事上、民事上及び行政上の措置を含むあらゆる形態の処罰又は不利益を指す。動詞として使用される場合、「制裁を行う」とは、このような形態の処罰又は不利益を与えることを指す。 |
「安全保障部門」の定義には以下が含まれる。 | |
(i) | 正規軍、警察及びその他の法執行機関、非正規軍、情報局、治安局(軍人・非軍事両方)を含む安全保障の提供者。ただし、これらに限定されるものではない。 |
(ii) | 安全保障の提供者の調整、管理、監視の責任を持つ全ての執行機関、部局、省庁。 |
【宮内庁】皇后陛下お誕生日に際し(平成25年) 皇后陛下お誕生日に際してのご近影 「5月の憲法記念日をはさみ,今年は憲法をめぐり,例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら,かつて,あきる野市の五日市を訪れた時,郷土館で見せて頂いた「五日市憲法草案」のことをしきりに思い出しておりました。明治憲法の公布(明治22年)に先立ち,地域の小学校の教員,地主や農民が,寄り合い,討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で,基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務,法の下の平等,更に言論の自由,信教の自由など,204条が書かれており,地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が,日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の,政治参加への強い意欲や,自国の未来にかけた熱い願いに触れ,深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。」 |
人間ナメんなよ!
でわっ!