「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(英語:Global Principles On National Security And The Right To Information)」
通称: ツワネ原則
日本語訳:日本弁護士連合会
※未定訳※一部字句修正等を行う可能性があります。
第2章 :国家安全保障を理由に秘匿され得る情報と開示されるべき情報
原則 9:合理的に秘匿され得る情報 | ||
(a) | 公権力は国家安全保障を理由に、情報にアクセスする公衆の権利を制限することができるが、そのような制限は、本原則の他のすべての条文に適合しており、その情報が公的機関によって保有されており、下記のカテゴリーのいずれかに当てはまる場合に限られる。 | |
(i) | その情報が戦略上有効である期間中の、進行中の防衛計画や作戦、状況に関する情報 | |
注記: | 「戦略上有効である期間中」とは、開示されても国家の準備態勢、能力、又は計画を知るために敵が利用できる情報が何もない場合、その情報は開示されなければならないということを意味している。 | |
(ii) | 通信システムを含む兵器システムその他の軍事システムの製造、性能、使用についての情報。 | |
注記: | この情報は技術データや発明、及び製造、性能、使用に関する情報を含む。兵器や他の軍事システムに関する予算に関する情報は公衆が入手可能でなければならない。原則10C(3)10F.を参照。通常兵器について武器貿易協定で推奨されるような兵器の管理リストを維持・公開することは国家にとって優れた実践である。また、兵器や装備、兵士の数に関する情報を公開することも優れた実践となる。 | |
(iii) | 国土や重要インフラ又は重要な国家機関を、脅威または妨害工作や武力の行使から護衛するための具体的な手段に関する情報で、機密であることでその効果を発揮するもの。 | |
注記: | 「重要インフラ」とは戦略的資源、資産及び物理的又は仮想的システムを指し、それゆえこれらの資源、資産及びシステムの破壊又は無効化は国家安全保障を弱体化させる影響があるもののこと。 | |
(iv) | 情報局の活動、情報源、手段に関連又は由来する情報で、国家安全保障の問題に関するもの、及び外国や政府間機関からとくに極秘を期待されて提供された国家安全保障の問題に関する情報、及び他の外交上のコミュニケーションで提供された国家安全保障の問題に関する情報。 | |
注記: | そのような期待は文書で記録されることが望ましい。 | |
注記: | テロやテロ対策に関わる特定の情報が上記のいずれかのカテゴリーで取り上げられる場合、このような情報にアクセスする公衆の権利はこの原則や他の原則に従って国家安全保障の見地から制約を受けることがあり得る。ただ し同時に、テロやテロ対策に関わるいくつかの情報にはとくに高い公益性があり得る。原則10A、10B、10H(1)を参照。 |
(b) | 国内法において、少なくとも上記のカテゴリーリストと同程度に範囲を狭めた情報カテゴリーのリストを定めることは優れた実践である。 |
(c) | 国家は、上記のカテゴリーリストに新たなカテゴリーを追加することができる。ただし、原則2(c)で提案されているように、そのカテゴリーが具体的に特定され厳密に定義された上で、情報を秘匿することが、法律で定められた正当な国家安全保障を保護するために必要である場合に限られる。あらたなカテゴリーを提案するに際しては、国家はそのカテゴリーの情報の開示がどのように国家の安全保障を脅かすかについて説明するべきである。 |
原則 10:公開することが望ましいと強く推定される情報又は公開による利益が大きい情報のカテゴリー 下記に挙げたものを含むいくつかの情報のカテゴリーは、法の支配と民主的監視プロセスにとって特に重要であることを考えると、特に高い公益性を持っている。したがって、その情報は公にされ、積極的に開示されるべきであると強く推定され、場合によってはその公開は最優先の義務となる。 下記のカテゴリーにおける情報は、少なくとも公開が望ましいと強く推定されるべき情報であり、国家安全保障を根拠に秘匿され得るのは、以下の場合に限られる。すなわち、本原則の他の条項と矛盾しない形で、最も例外的な状況においてのみ、厳密に限定された期間に限り、法に基づいてのみ、そして開示することによる損害を抑える合理的な手段がない場合である。下記に記された特定のサブカテゴリーの情報は本質的に公開による利益が最優先されるものであり、国家安全保障を根拠に非公開とすることは決して正当化され得ない。 A.国際人権法及び人道法上の違反 | |
(1) | 深刻な人権侵害や、国際法に基づく犯罪を含む国際人道法の重大な違反、個人の自由と安全に対する権利の組織的又は広範な侵害に関する情報の開示には、優先的な公益性がある。このような情報は、いかなる場合においても国家安全保障を根拠に非公開とされてはならない。 |
(2) | 他の人権侵害や人道法違反に関する情報は、公開されることが強く推定されるものであり、どのような場合でも、人権侵害の説明責任を阻むような形で、又は犠牲者が効果的な救済にアクセスする手段を奪うような形で、国家安全保障を根拠に秘匿することはできない。 |
(3) | 国家が移行期正義の過程にあり、真実、正義、補償、再発阻止の保証などを確保することがとくに求められている時、過去の体制下でなされた人権侵害に関する情報を全体として社会に開示することは最優先の公益性を持つ。後任の政府は、前政権が隠ぺいしていたこのような情報を含むあらゆる記録をただちに保護し、保全し、遅滞なく公開するべきである。 |
注記: | 人権侵害に関する情報の探索又は再構築の義務については、原則21(c)を参照。 |
(4) | この原則は、人権侵害が立証されている場合よりはその存在について論争があるか疑われている場合において、議論されているその侵害の真実を明らかにするような情報(単独もしくは他の情報と関連して用いられる)に対して適用される。 |
(5) | この原則はすでに発生した人権侵害及び現在進行中の人権侵害に対して適用され、人権侵害の行為者が情報を保有する国家であれ他の者であれ適用される。 |
(6) | この原則で取り上げる人権侵害に関する情報は以下のとおりだが、これに限定されない。 | |
(a) | 人権侵害を構成する作為又は不作為、及び発生の日付や状況、場合によっては行方不明者や遺体の所在を示す完全な記述や記録。 | |
(b) | 被害者、親族、証言者のプライバシーその他の権利を侵害しない範囲での全被害者の身元情報、人権を守る上で関連があり得る被害者の数や特徴を示す集計データ又は匿名データ。 | |
注記: | 被害者や親族及び証言者の氏名や個人情報は、更なる人権侵害を防ぐ必要がある範囲で、また本人や、死亡している場合はその遺族が情報の非公開をはっきりと自発的に要求した場合、又は非公開が本人自身の希望であることが明白な場合や公開することによって不利益を受ける集団にとって非公開であることが特に必要であることが明白な場合には、一般への開示は保留することができる。性暴力の被害者に関しては、氏名や他の個人情報の公開に対する承諾を得ることは必須である。18歳未満の子どもの個人情 報は一般へ公開されるべきではない。この原則を解釈する時に念頭に置くべきなのは、様々な政府が様々な時代に、被害者個人の真の希望を顧みず、重大な人権侵害を受けた、又は受けているまさにその個人を含む プライバシーの権利を盾に、人権侵害を国民の目から隠してきたという現実である。しかしながらこのことで、集計データ又は匿名データの公表を除外すべきではない。 | |
(c) | 人権侵害を実行した、若しくは責任のある機関と個人の氏名、及びより一般的に、人権侵害の発生当時存在した又は関与した国家安全保障部門の名称、上司や司令官の氏名、そして指揮や監督の範囲に関する情報。 | |
(d) | 人権侵害の原因及び防止しなかったことに関する情報。 |
B.人間の自由と安全に関する権利の保護、拷問及び虐待の防止、生存権の保護 この原則が取り上げる情報は以下のとおり。 | ||
(1) | 国家による人命剥奪の権限を与える法律や規則、及び自由の剥奪に関する法律や規則(根拠、手続、移送、処遇、取り調べ方法を含めた拘禁状態に関するものを含む)。このような法律や規則を開示することには最優先の公益性がある。 | |
注記: | 原則10を通して使用される「法律や規則」という語は議会立法又は委任立法、法令、規則及び条例、また大統領、首相、大臣又は他の公的機関による布告や行政命令、司法命令など、法的拘束力があるすべてのものを含む。また「法律や規則」は行政官によって権限を持つとみなされる、あらゆる命令や法解釈をも含む。自由の剥奪には、あらゆる形態の逮捕、拘禁、投獄又は抑留を含む。 | |
(2) | 武力紛争時を含め、国家や国家の代理によって運営され人々の自由が剥奪されたあらゆる場所の所在。及び自由を奪われた人々の身元情報、罪状、拘禁理由。 | |
(3) | あらゆる人の拘禁中の死亡に関する情報、国家の責任によるその他の人命剥奪に関する情報(犠牲者の身元情報、そうした人々の死亡の状況、遺体の所在を含む)。 | |
注記: | いかなる状況であれ、国家安全保障を根拠に、人の秘密拘禁、秘密拘禁場所の設立と運営、秘密処刑につながる情報を秘匿してはならない。また、いかなる状況であれ、国家によって、又は国家によって権限・援助・承認を与えられた者によって自由を剥奪された人の行方や所在が、その人の家族や、その人の幸福に正当な関係のある他の人々に対して隠されたり、通知を拒否されたりしてはならない。 自由を剥奪された者、拘禁中に死亡した者、又は国家機関によって死に至らしめられた者の氏名及びその他の個人情報は、当該個人又は当人が死亡している場合はその家族がとくに秘匿を希望する場合、また秘匿することがかえって人権を尊重する場合は、プライバシーの権利の保護の必要な範囲で一般に対して秘匿することができる。自由を剥奪されている子どもの個人情報は一般に対して開示するべきではない。しかしこうした制限は、集計データ又は匿名データの公表を妨げるものではない。 |
C.政府の構造と権力 この原則で取り上げる情報は以下のとおりだが、これに限定されない。 軍隊、警察、安全保障組織や諜報機関及びその下部組織全部の存在。 | ||
(1) | これらの組織や機関、その監視機関、内部説明責任メカニズムに適用され得る法律及び規則。そしてこれらを統轄する当局者の氏名。 | |
(2) | 総予算額、主要項目、基本的支出情報を含む公的資金の支出を評価・管理するために必要な情報。 | |
(3) | 二国間又は多国間で締結された協定の存在と条項、及び国家安全保障事項に基づく当該国による他の主要な国際的関与。 |
D.軍事力行使又は大量破壊兵器の入手の決定 | ||
(1) | この原則で取り上げる情報は、戦闘部隊の派遣又はその他の軍事行動の決定に関連する情報であり、その軍事行動の事実の確認、総合的な規模と範囲、論拠の説明を含む。また、公式の理由の一部として述べられた事実が誤りであったことを示すあらゆる情報。 | |
注記: | 行動の「総合的な」規模と範囲に言及した理由は、これを開示することにより、問題となっている軍事行動の作戦面のすべての詳細を公表することなく、戦闘部隊の派遣決定に関連する情報にアクセスするという高い公益性を満たすことが一般的にできるからである(原則9を参照)。 | |
(2) | 国家による核兵器や他の大量破壊兵器の保有や入手は、製造過程や作戦能力について詳細である必要は無いが、重要な公共の利益の問題であるため秘匿されるべきではない。 | |
注記: | この副原則はいかなる意味においても、このような兵器の入手を容認するものと解釈されるべきではない。 |
E.監視 | ||
(1) | あらゆる種類の監視に関する全体的な法的枠組みは、監視の認可や対象の選択、得られた資料の使用、共有、保管、破棄のすべての過程と同様、公衆がその情報にアクセスできるべきである。 | |
注記: | この情報に含まれるものは次のとおり。(a)プロファイリングやデータ収集などの間接的な監視を含め公開・非公開のあらゆる形態の監視及び利用される監視手段の種類について定める法律(b)許容できる監視対象(c)監視を実施又は継続するために必要な疑惑の発端(d)監視手段の期間の限度(e)このような手段の利用の承認・審査手続(f)国家安全保障上の目的で収集及び/又は加工され得る個人データの種類(g)こうしたデータの利用、保有、消去、移転に適用する基準。 | |
(2) | 公衆は、監視を行う権限を付与された機関についての情報及びそのような監視行為の利用についての統計にアクセスできるべきである。 | |
注記: | これには、毎年特定の監視行為を行う特定の権限を付与された各政府機関の情報や、各機関に毎年与えられる監視許可の数、毎年監視の対象となる個人の数及び通信の数に関する入手できる最善の情報、明確な権限なしに監視が行われているかどうか、もし行われているとすれば、どの政府機関によるものかといった情報が含まれている。 法に従って行われ人権上の義務に矛盾しない監視ならば、必ずしも事実や監視の詳細まで公衆の知る権利に含む必要はない。このような情報は少なくとも監視期間が終了するまでは公表されなくてもよい。 | |
(3) | さらに、違法な監視が行われた事実があれば、公衆はすべてを知らされるべきである。このような監視の対象となった個人のプライバシーの権利を侵害しない最大限の範囲で情報が公開されるべきである。 | |
(4) | 本原則は情報にアク セスする公衆の権利に関するものであり、監視対象となった、あるいはなったかもしれないと信じる個人のその他の実質的且つ手続的権利を損なうものではない。 | |
注記: | 進行中の監視行動又は情報源や手段を危機に陥れずに可能な限りにおいて、秘密監視対象となった人に(最低限、利用した監視方法の種類、日付、監視方法の実行に責任のある機関を)通知することを公権力に義務付けるのが望ましい。 | |
(5) | この原則で開示が望ましいと強く推定される情報は、他国の活動の監視にのみ関連する情報には適用されない。 | |
注記: | 他国の行動に対するものを含め、秘密監視行動を通じて得られた情報は原則10Aに示された状況において開示の対象とすべきである。 |
F.財務情報 この原則で取り上げられる情報には、国家安全保障部門の財政及び国家安全保障部門の財政を定めた規定を公衆が理解するために十分な情報が含まれる。このような情報は下記を含むがこれに限定されない。 | ||
(1) | 主要項目を含めた部門別及び機関別予算 | |
(2) | 主要項目を含めた年度末財務諸表 | |
(3) | 財務管理規則と管理システム | |
(4) | 資金調達規則及び | |
(5) | 最高会計検査機関及びその他の国家安全保障機関の財政面を審査する責任のある機関によって作成された報告書。機密扱いにされた同様の報告書のあらゆる章の概要を含む。 |
G.憲法・法令違反及びその他の権力乱用に関する説明責任 この原則は、公権力又は公務関係者による憲法・法令違反及びその他の権力乱用の存在、性質、規模に関する情報を含む。 |
H.公衆衛生、市民の安全又は環境 この原則に取り上げる情報は以下のとおり。 | ||
(1) | 公衆衛生、市民の安全又は環境に対する差し迫った実際的な脅威がある場合において、その脅威から生じる損害を理解したり、防止・軽減する手段をとったりすることを可能にするすべての情報。その脅威の原因が自然か人間活動(国家によるものか民間企業によるものか)かを問わない。 | |
(2) | 天然資源の搾取、汚染排出物リスト、大規模公共事業又は資源採取の計画又は実施の環境への負荷、そして特に危険な施設のリスク評価と管理計画に関する定期的に更新されるその他の情報。 |
「ツワネ原則」長いんです。読み込むのにも根気が要りますw。
つづく・・・。
【宮内庁】皇后陛下お誕生日に際し(平成25年) 皇后陛下お誕生日に際してのご近影 「5月の憲法記念日をはさみ,今年は憲法をめぐり,例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら,かつて,あきる野市の五日市を訪れた時,郷土館で見せて頂いた「五日市憲法草案」のことをしきりに思い出しておりました。明治憲法の公布(明治22年)に先立ち,地域の小学校の教員,地主や農民が,寄り合い,討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で,基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務,法の下の平等,更に言論の自由,信教の自由など,204条が書かれており,地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が,日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の,政治参加への強い意欲や,自国の未来にかけた熱い願いに触れ,深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。」 |
人間ナメんなよ!
でわっ!