ミヒャエル・エンデが日本に問いかけるもの
2000年07月26日(水)
萬晩報通信員 園田 義明
<抜粋>
●エンデの日本へのメッセージ
「日本は、経済的に自立し、アメリカの植民地的存在から抜け出すしか道がなかったと思います。しかし、そこでふたつのことが混じり合ったのですね。従来の古い美徳感覚が、近代的工業社会の原理と混ざり合わさったのです。つまり、連体意識一般や領主に対する忠誠は、今日では企業に捧げられています。しかしこれはこの先、葛藤を生むと思います。このふたつは、本来相いれないものです。『これは、近い将来に十分にある得ることですが、経済が少し傾けば全国民的な神経虚脱症を引き起こしてしまうのではないでしょうか。』」
「私は日本の考え方には一種の危険性があると思います。それは、どの問題においても思考を日本の関心事に限定することです。もし、このように言ってもよろしければ、それは日本の国家的なエゴイズムのようなものです。このエゴイズムは、物事が世界全体にどのような結果をもたらすかを考えず、つねにただ、日本にとってどのような結果になるかだけを考えます。私は、今世紀においては人類レベルで考えることを学ばなければならないと思うのです。そこで、まさに主導的な工業国こそが、その中でもとりわけ日本は、日本に対する責任だけでなく、世界に対する責任を負うことを学ばなければならないと思います。これが、日本の友人への大きな願いです。」
</抜粋>
もう10年も前の記事になりますが、ワタシなんぞはネットが無い時代に少年期を過ごしたので、今の青少年はネットで自由に情報にアクセス出来てウラヤマシイ限りです。ネットの普及があと5年早かったら、今の世界もだいぶ変わっていたんじゃないか?と思ったりもします。
で、上記の記事をたまたま見つけたのですが、「開き直る」の回で述べた・・・
<抜粋>
それはそれとして、大企業以外の日本全国に散らばった各企業には、か様な「同郷人意識」が依然根強く残っており、それ故に従業員を交換部品の様には扱わない。従って失業率の曲線にも急激な変化が現れない・・・。とワタシは推察したワケです。はい。
</抜粋>
・・・と同じ事を、エンデさんも2000年の時点で見抜いていたワケです。外国人でありながら・・・。スゴイです。
ついでに、日本が国家的なエゴイズムに陥るとも述べていますが、まさに昨今の「日本独立論」を言い当てている様です。ワタシもそうですが、「日本の独立」という言葉の甘美な響きに魅せられて、じゃあ独立後はどうすんの?と云う展望が置き去りにされてないでしょうか?
世界中が混乱している現在の時勢において、自分さえよければ良いと云う考え方になってしまうのは仕方の無い事なのかも知れませんし、究極には誰も非難出来ない事でしょう。ジッサイ穀物の輸出禁止をしている国もありますが、その国の庶民の食糧までこっちに廻せと言うのも、無体な要求です。だって、汗水流して食糧を生産している当事者なのですから。
FAO、ロシアの穀物禁輸で緊急会合へ
2010.9.3 22:35
<記事貼付>
【ロンドン=木村正人】国連食糧農業機関(FAO、本部ローマ)は2日、ロシアの穀物禁輸措置により「2007~08年と同じ食糧危機が起きる懸念が広がっている」として、24日に緊急会合を開催する方向で調整に入った。
世界第3位の小麦生産国であるロシアのプーチン首相は2日、8月15日から実施した小麦などの穀物禁輸措置について「来年(11月)の収穫終了後でなければ、禁輸措置の解除は検討できない」と述べ、今年12月末までとしている禁輸措置が、来年末まで伸びる可能性に言及した。
FAOの緊急会合開催の動きはこの発言を受けたもので、FAOは「ロシアの小麦輸出が2年連続で止まれば、暴動の引き金になる」と警鐘を鳴らしている。
ロシアでは記録的な猛暑による干魃によって、今年の穀物収穫量は最大で38%減少すると予想され、ロシア政府は国内需要を優先し禁輸措置をとった。
この影響で、昨年9月に1トン当たり141ユーロ(約1万5千円)だった小麦の国際価格は、231.5ユーロ(約2万5千円)まで上昇しており、ロシアから穀物を輸入している北アフリカ諸国では、食料品値上げへの怒りが増幅している。
小麦の不足でパンの価格が25%も上がっているアフリカ南部モザンビークでは、暴動が起き、死者7人、負傷者約280人を出す事態となっている。首都マプトでは1、2の両日、暴徒化した市民が食料品店で略奪し、警官隊が発砲。政府は市民が築いたバリケードを撤去するため、軍隊を展開した。
前回の食糧危機では世界各地で暴動が起き、マダガスカルでは政権崩壊の引き金となった。
</記事貼付>
日本がアジアの片隅の小国になっても、このさい鎖国した方がイイんじゃない?
などという書き込みも見られますが(もちろん冗談でしょうが)、エンデさんとしてはそうなって欲しくないと言っているワケです。
ではエンデさんの言う、「日本は、日本に対する責任だけでなく、世界に対する責任を負うことを学ばなければならない」とはどういうことなのでしょう?
ワタシの解釈を述べるならば、世界に対する日本の責任=日本の役割とわ・・・
「調停者」としての役割を担って欲しい。
・・・と、エンデさんは期待しているのではないか?・・・と。
Ende`s Last Will
では何故?日本が「調停者」に成り得るのか。恐らくエンデさんは日本人の「八百万精神」に着目したのではないかと。すなわち、森羅万象全てに神が宿る以上、全ての存在は平等だという考え方です(でしょ?)。
全ての存在は平等であるという考え方は、世界の中でも日本が一番強いんじゃないですかね?宗教的には無節操だと外国からは非難されますが、ありとあらゆる神が共存している日本の状況と、同じクリスチャン同士でさえ殺し合いをしている北アイルランドと、どっちが本当に神の御心に、仏陀の慈悲に、アッラーのご加護に適うのでしょうか?
これも以前、「私的日本論」で書いた事ですが・・・
<抜粋>
日本人のルーツについてイロイロ説はありますが、遺伝子レベルで確かなことは人類のルーツが進化(移動)の過程で3つのグループに分かれ、その3つのグループが混ざり合っているのは、世界でも日本くらいだという事実です。
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Y染色体の亜型分化
日本においては異なる民族が長い時間をかけて共存して来た。その共存の為の知恵が「八百万精神」だったとワタシは理解しています。惜しむらくは、支配者側と被支配者側に分断され、その結果現代まで続く「差別」が生じてしまった事でしょうか。
日本の政治・・・に限らず、世界中でこの謂れ無き差別による間違った政治が行われているのは事実です。菅首相が小沢氏との党首選挙を揶揄して「西南戦争」と言ったらしいですが、これにしても「官軍」 VS 「賊軍」という対立=「差別」の感情がその根底に見て取れます。ワタシにわ。
私の闇の奥
ルワンダの霧が晴れ始めた(6)
<抜粋>
第一次世界大戦の結果、ルワンダ地域の植民地支配はドイツからベルギーに移りますが、白人宗主国は、少数派ツチ族の多数派フツ族に対する支配体制を強化維持する政策を一貫して採用しました。もともと世襲的にツチ人が酋長の地位を占める伝統はあったのですが、ベルギーはこれを制度化して、1935年には、お前はツチ、お前はフツというIDカードを各個人に押し付けることまでやってしまいます。種族間混血で、区別が必ずしもはっきりない場合も多かった筈ですが、いったんこの区別を確立すると、教育制度にしても両者を峻別して、カトリックの学校システムで、フツ族は低い教育しか与えられないのに、ツチ族にはエリート教育が与えられるようになりました。
</抜粋>
で、大切なのは日本人が自らの歴史と向き合うこと。支配者側に捏造された歴史の真実を知り、愕然とし、怒りがこみ上げてくるかも知れません。しかし、全ては過ぎたことなのです。いま、これからのことを「八百万精神」によって考えていく方がいいのです。それが進歩と云うものです。それが成長と云うものです。怨みを晴らすために争いを繰り返すか?それともお互い平等な立場に立って、次の世代の為に住みやすい世の中を残すのか?
蛇足ですが、日本人の「判官贔屓」と云う感情も、突き詰めればそれだけ支配者側に苦しめられた庶民が、日本全土に多かったという事実の裏返しではないでしょうか?
日本人が真の「八百万精神」に目覚められれば、エンデさんの言う「世界に対する責任」の意味も受け止められるんじゃないでしょうかね?ワタシたち・・・。
でわっ!