2012年6月30日土曜日

アラブ連盟シリア監視団レポート JAN/27/2012


League of Arab States Observer Mission to Syria
Report of the Head of the League of Arab States Observer Mission to Syria for the period from 24 December 2011 to 18 January 2012


 上記のファイル(pdf)をネット上で拾ったので、僭越ながら公開しました。真偽の程は検証してません。おいおい報告されている内容を自分なりに確認してみますが、ナンせワタシも英語が得意ではないのでいつになるか...。

 にしても、現在のシリアの状況を傍観することは、一部の国の「エゴ」が世界中(日本も含む)でまかり通る事を認めることになり、将来的には(現在でも?)日本にとっても見過ごすことのできない問題であると、ワタシなんぞは危機感を持つワケですが...。

 全30ページに及ぶ報告書、ご照覧ください。(長いっスw)










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人間ナメんなよ!


でわっ!

(再々々)或るガン患者の告白

       
 本日(2012年6月29日)、首相官邸前の「大飯原発再稼動反対抗議集会」にご参加されたみなさま、そして全国各地の抗議集会ご参加されたみなさま、お疲れ様でした。何はともあれ、ワタシが危惧していたような騒ぎも起こらず、無事に抗議集会を終えられたことに、まずは「ホッ...」としております。

 何せ「反原発」の炎?は諸先輩方が、ン十年も前から絶やさずに守り続けてきたワケです。本来であれば、福島であのような事故が起こる前に「原発」とは縁を切るべきでしたが、今更それを言ったところで詮無き事。

 現在、「原発」が如何に社会にとって危険かを知ったからには、一時的な感情に身を委ねるだけでなく、諸先輩方が延々と繰り返し述べてきた言葉に真摯に耳を傾け、そして、諸先輩方と共に、実効性、具体性の有る「原発廃止」への道を、これからは進むしかありません。


<転載> 

原発がどんなものか知ってほしい(全)
平井憲夫


1.私は原発反対運動家ではありません。

 二十年間、原子力発電所の現場で働いていた者です。原発については賛成だとか、危険だとか、安全だとかいろんな論争がありますが、私は「原発とはこういうものですよ」と、ほとんどの人が知らない原発の中のお話をします。そして、最後まで読んでいただくと、原発がみなさんが思っていらっしゃるようなものではなく、毎日、被曝者を生み、大変な差別をつくっているものでもあることがよく分かると思います。

 はじめて聞かれる話も多いと思います。どうか、最後まで読んで、それから、原発をどうしたらいいか、みなさんで考えられたらいいと思います。原発について、設計の話をする人はたくさんいますが、私のように施工、造る話をする人がいないのです。しかし、現場を知らないと、原発の本当のことは分かりません。

 私はプラント、大きな化学製造工場などの配管が専門です。二十代の終わりごろに、日本に原発を造るというのでスカウトされて、原発に行きました。一作業負だったら、何十年いても分かりませんが、現場監督として長く働きましたから、原発の中のことはほとんど知っています。


2.「安全」は机上の話

 去年(1995年)の1月17日に阪神大震災が起きて、国民の中から「地震で原発が壊れたりしないか」という不安の声が高くなりました。原発は地震で本当に大丈夫か、と。しかし、決して大丈夫ではありません。国や電力会社は、耐震設計を考え、固い岩盤の上に建設されているので安全だと強調していますが、これは机上の話です。

 この地震の次の日、私は神戸に行ってみて、余りにも原発との共通点の多さに、改めて考えさせられました。まさか、新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになるとは、それまで国民のだれ1人考えてもみなかったと思います。

 世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは官庁検査によって、きびしい検査が行われていると思われています。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。

 なぜ、このような事が起きてしまったのでしょうか。その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いていて、現場の施工、管理を怠ったためです。それが直接の原因ではなくても、このような事故が起きてしまうのです。


3.素人が造る原発

 原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故、ヒューマンエラーがあまりにも多すぎます。それは現場にブロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていないからです。机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどうなっているのかという議論は1度もされたことがありません。

 原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。

 日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。

 仮に、自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をしてもらっても、大工や左官屋の腕が悪かったら、雨漏りはする、建具は合わなくなったりしますが、残念ながら、これが日本の原発なのです。

 ひとむかし前までは、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。職人は自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。それが十年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。全くの素人を経験不問という形で募集しています。素人の人は事故の怖さを知らない、なにが不正工事やら手抜きかも、全く知らないで作業しています。それが今の原発の実情です。

 例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、一歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。本人は針金を落としたことは知っていたのに、それがどれだけの大事故につながるかの認識は全然なかったのです。そういう意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造るという意味で危ないのは同じです。

 現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。マニュアル化というのは図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていくんです。そうすると、今、自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。こういうことも、事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。

 また、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。これではちゃんとした技術を教えることができません。それに、いわゆる腕のいい人ほど、年問の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。だから、よけいに素人でもいいということになってしまうんです。

 また、例えば、溶接の職人ですと、目がやられます。三十歳すぎたらもうだめで、細かい仕事が出来なくなります。そうすると、細かい仕事が多い石油プラントなどでは使いものになりませんから、だったら、まあ、日当が安くても、原発の方にでも行こうかなあということになります。

 皆さんは何か勘違いしていて、原発というのはとても技術的に高度なものだと思い込んでいるかも知れないけれど、そんな高級なものではないのです。

 ですから、素人が造る原発ということで、原発はこれから先、本当にどうしようもなくなってきます。


4.名ばかりの検査・検査官

 原発を造る職人がいなくなっても、検査をきっちりやればいいという人がいます。しかし、その検査体制が問題なのです。出来上がったものを見るのが日本の検査ですから、それではダメなのです。検査は施工の過程を見ることが重要なのです。

 検査官が溶接なら溶接を、「そうではない。よく見ていなさい。このようにするんだ」と自分でやって見せる技量がないと本当の検査にはなりません。そういう技量の無い検査官にまともな検査が出来るわけがないのです。メーカーや施主の説明を聞き、書類さえ整っていれば合格とする、これが今の官庁検査の実態です。

 原発の事故があまりにもひんぱんに起き出したころに、運転管理専門官を各原発に置くことが閣議で決まりました。原発の新設や定検(定期検査)のあとの運転の許可を出す役人です。私もその役人が素人だとは知っていましたが、ここまでひどいとは知らなかったです。

 というのは、水戸で講演をしていた時、会場から「実は恥ずかしいんですが、まるっきり素人です」と、科技庁(科学技術庁)の者だとはっきり名乗って発言した人がいました。その人は「自分たちの職場の職員は、被曝するから絶対に現場に出さなかった。折から行政改革で農水省の役人が余っているというので、昨日まで養蚕の指導をしていた人やハマチ養殖の指導をしていた人を、次の日には専門検査官として赴任させた。そういう何にも知らない人が原発の専門検査官として運転許可を出した。美浜原発にいた専門官は三か月前までは、お米の検査をしていた人だった」と、その人たちの実名を挙げて話してくれました。このようにまったくの素人が出す原発の運転許可を信用できますか。

 東京電力の福島原発で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した大事故が起きたとき、読売新聞が「現地専門官カヤの外」と報道していましたが、その人は、自分の担当している原発で大事故が起きたことを、次の日の新聞で知ったのです。なぜ、専門官が何も知らなかったのか。それは、電力会社の人は専門官がまったくの素人であることを知っていますから、火事場のような騒ぎの中で、子どもに教えるように、いちいち説明する時間がなかったので、その人を現場にも入れないで放って置いたのです。だから何も知らなかったのです。

 そんないい加減な人の下に原子力検査協会の人がいます。この人がどんな人かというと、この協会は通産省を定年退職した人の天下り先ですから、全然畑違いの人です。この人が原発の工事のあらゆる検査の権限を持っていて、この人の0Kが出ないと仕事が進まないのですが、検査のことはなにも知りません。ですから、検査と言ってもただ見に行くだけです。けれども大変な権限を持っています。この協会の下に電力会社があり、その下に原子炉メーカーの日立・東芝・三菱の三社があります。私は日立にいましたが、このメーカーの下に工事会社があるんです。つまり、メーカーから上も素人、その下の工事会社もほとんど素人ということになります。だから、原発の事故のことも電力会社ではなく、メー力-でないと、詳しいことは分からないのです。

 私は現役のころも、辞めてからも、ずっと言っていますが、天下りや特殊法人ではなく、本当の第三者的な機関、通産省は原発を推進しているところですから、そういう所と全く関係のない機関を作って、その機関が検査をする。そして、検査官は配管のことなど経験を積んだ人、現場のたたき上げの職人が検査と指導を行えば、溶接の不具合や手抜き工事も見抜けるからと、一生懸命に言ってきましたが、いまだに何も変わっていません。このように、日本の原発行政は、余りにも無責任でお粗末なものなんです。


5.いいかげんな原発の耐震設計

 阪神大震災後に、慌ただしく日本中の原発の耐震設計を見直して、その結果を九月に発表しましたが、「どの原発も、どんな地震が起きても大丈夫」というあきれたものでした。私が関わった限り、初めのころの原発では、地震のことなど真面目に考えていなかったのです。それを新しいのも古いのも一緒くたにして、大丈夫だなんて、とんでもないことです。1993年に、女川原発の一号機が震度4くらいの地震で出力が急上昇して、自動停止したことがありましたが、この事故は大変な事故でした。なぜ大変だったかというと、この原発では、1984年に震度5で止まるような工事をしているのですが、それが震度5ではないのに止まったんです。わかりやすく言うと、高速道路を運転中、ブレーキを踏まないのに、突然、急ブレーキがかかって止まったと同じことなんです。これは、東北電力が言うように、止まったからよかった、というような簡単なことではありません。5で止まるように設計されているものが4で止まったということは、5では止まらない可能性もあるということなんです。つまり、いろんなことが設計通りにいかないということの現れなんです。

 こういう地震で異常な止まり方をした原発は、1987年に福島原発でも起きていますが、同じ型の原発が全国で10もあります。これは地震と原発のことを考えるとき、非常に恐ろしいことではないでしょうか。


6.定期点検工事も素人が

 原発は一年くらい運転すると、必ず止めて検査をすることになっていて、定期検査、定検といっています。原子炉には70気圧とか、150気圧とかいうものすごい圧力がかけられていて、配管の中には水が、水といっても300℃もある熱湯ですが、水や水蒸気がすごい勢いで通っていますから、配管の厚さが半分くらいに薄くなってしまう所もあるのです。そういう配管とかバルブとかを、定検でどうしても取り替えなくてはならないのですが、この作業に必ず被曝が伴うわけです。

 原発は一回動かすと、中は放射能、放射線でいっぱいになりますから、その中で人間が放射線を浴びながら働いているのです。そういう現場へ行くのには、自分の服を全部脱いで、防護服に着替えて入ります。防護服というと、放射能から体を守る服のように聞こえますが、そうではないんですよ。放射線の量を計るアラームメーターは防護服の中のチョッキに付けているんですから。つまり、防護服は放射能を外に持ち出さないための単なる作業着です。作業している人を放射能から守るものではないのです。だから、作業が終わって外に出る時には、パンツー枚になって、被曝していないかどうか検査をするんです。体の表面に放射能がついている、いわゆる外部被曝ですと、シャワーで洗うと大体流せますから、放射能がゼロになるまで徹底的に洗ってから、やっと出られます。

 また、安全靴といって、備付けの靴に履き替えますが、この靴もサイズが自分の足にきちっと合うものはありませんから、大事な働く足元がちゃんと定まりません。それに放射能を吸わないように全面マスクを付けたりします。そういうかっこうで現場に入り、放射能の心配をしながら働くわけですから、実際、原発の中ではいい仕事は絶対に出来ません。普通の職場とはまったく違うのです。

 そういう仕事をする人が95%以上まるっきりの素人です。お百姓や漁師の人が自分の仕事が暇な冬場などにやります。言葉は悪いのですが、いわゆる出稼ぎの人です。そういう経験のない人が、怖さを全く知らないで作業をするわけです。

 例えば、ボルトをネジで締める作業をするとき、「対角線に締めなさい、締めないと漏れるよ」と教えますが、作業する現場は放射線管理区域ですから、放射能がいっぱいあって最悪な所です。作業現場に入る時はアラームメーターをつけて入りますが、現場は場所によって放射線の量が違いますから、作業の出来る時間が違います。分刻みです。

 現場に入る前にその日の作業と時間、時間というのは、その日に浴びてよい放射能の量で時間が決まるわけですが、その現場が20分間作業ができる所だとすると、20分経つとアラ-ムメーターが鳴るようにしてある。だから、「アラームメーターが鳴ったら現場から出なさいよ」と指示します。でも現場には時計がありません。時計を持って入ると、時計が放射能で汚染されますから腹時計です。そうやって、現場に行きます。

 そこでは、ボルトをネジで締めながら、もう10分は過ぎたかな、15分は過ぎたかなと、頭はそっちの方にばかり行きます。アラームメーターが鳴るのが怖いですから。アラームメーターというのはビーッととんでもない音がしますので、初めての人はその音が鳴ると、顔から血の気が引くくらい怖いものです。これは経験した者でないと分かりません。ビーッと鳴ると、レントゲンなら何十枚もいっぺんに写したくらいの放射線の量に当たります。ですからネジを対角線に締めなさいと言っても、言われた通りには出来なくて、ただ締めればいいと、どうしてもいい加滅になってしまうのです。すると、どうなりますか。


7.放射能垂れ流しの海

 冬に定検工事をすることが多いのですが、定検が終わると、海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。はっきり言って、今、日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。日本の海が放射能で汚染されてしまっているのです。

 海に放射能で汚れた水をたれ流すのは、定検の時だけではありません。原発はすごい熱を出すので、日本では海水で冷やして、その水を海に捨てていますが、これが放射能を含んだ温排水で、一分間に何十トンにもなります。

 原発の事故があっても、県などがあわてて安全宣言を出しますし、電力会社はそれ以上に隠そうとします。それに、国民もほとんど無関心ですから、日本の海は汚れっぱなしです。

 防護服には放射性物質がいっぱいついていますから、それを最初は水洗いして、全部海に流しています。排水口で放射線の量を計ると、すごい量です。こういう所で魚の養殖をしています。安全な食べ物を求めている人たちは、こういうことも知って、原発にもっと関心をもって欲しいものです。このままでは、放射能に汚染されていないものを選べなくなると思いますよ。

 数年前の石川県の志賀原発の差止め裁判の報告会で、八十歳近い行商をしているおばあさんが、こんな話をしました。「私はいままで原発のことを知らなかった。今日、昆布とわかめをお得意さんに持っていったら、そこの若奥さんに「悪いけどもう買えないよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから」って言われた。原発のことは何も分からないけど、初めて実感として原発のことが分かった。どうしたらいいのか」って途方にくれていました。みなさんの知らないところで、日本の海が放射能で汚染され続けています。


8.内部被爆が一番怖い

 原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。

 ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが内部被曝になります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びるわけですから。

 体の中に入った放射能は、通常は、三日くらいで汗や小便と一緒に出てしまいますが、三日なら三日、放射能を体の中に置いたままになります。また、体から出るといっても、人間が勝手に決めた基準ですから、決してゼロにはなりません。これが非常に怖いのです。どんなに微量でも、体の中に蓄積されていきますから。

 原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学できるところは、とてもきれいにしてあって、職員も「きれいでしょう」と自慢そうに言っていますが、それは当たり前なのです。きれいにしておかないと放射能のホコリが飛んで危険ですから。

 私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。癌の宣告を受けたとき、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。でも、私の母が何時も言っていたのですが、「死ぬより大きいことはないよ」と。じゃ死ぬ前になにかやろうと。原発のことで、私が知っていることをすべて明るみに出そうと思ったのです。


9.普通の職場環境とは全く違う

 放射能というのは蓄積します。いくら徴量でも十年なら十年分が蓄積します。これが怖いのです。日本の放射線管理というのは、年間50ミリシーベルトを守ればいい、それを越えなければいいという姿勢です。

 例えば、定検工事ですと三ケ月くらいかかりますから、それで割ると一日分が出ます。でも、放射線量が高いところですと、一日に5分から7分間しか作業が出来ないところもあります。しかし、それでは全く仕事になりませんから、三日分とか、一週間分をいっぺんに浴びせながら作業をさせるのです。これは絶対にやってはいけない方法ですが、そうやって10分間なり20分間なりの作業ができるのです。そんなことをすると白血病とかガンになると知ってくれていると、まだいいのですが…。電力会社はこういうことを一切教えません。

 稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが一本緩んだことがありました。動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。一列に並んで、ヨーイドンで7メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、1、2、3と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで160人分、金額で四百万円くらいかかりました。

 なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を一日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。放射能というのは非常に危険なものですが、企業というものは、人の命よりもお金なのです。


10.「絶対安全」だと五時間の洗脳教育

 原発など、放射能のある職場で働く人を放射線従事者といいます。日本の放射線従事者は今までに約二七万人ですが、そのほとんどが原発作業者です。今も九万人くらいの人が原発で働いています。その人たちが年一回行われる原発の定検工事などを、毎日、毎日、被曝しながら支えているのです。

 原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは“マッカナ、オオウソ”である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。  

 こういう「原発安全」の洗脳を、電力会社は地域の人にも行っています。有名人を呼んで講演会を開いたり、文化サークルで料理教室をしたり、カラー印刷の立派なチラシを新聞折り込みしたりして。だから、事故があって、ちょっと不安に思ったとしても、そういう安全宣伝にすぐに洗脳されてしまって、「原発がなくなったら、電気がなくなって困る」と思い込むようになるのです。

 私自身が二十年近く、現場の責任者として、働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール、「洗脳教育」をやって来ました。何人殺したかわかりません。みなさんから現場で働く人は不安に思っていないのかとよく聞かれますが、放射能の危険や被曝のことは一切知らされていませんから、不安だとは大半の人は思っていません。体の具合が悪くなっても、それが原発のせいだとは全然考えもしないのです。作業者全員が毎日被曝をする。それをいかに本人や外部に知られないように処理するかが責任者の仕事です。本人や外部に被曝の問題が漏れるようでは、現場責任者は失格なのです。これが原発の現場です。

 私はこのような仕事を長くやっていて、毎日がいたたまれない日も多く、夜は酒の力をかり、酒量が日毎に増していきました。そうした自分自身に、問いかけることも多くなっていました。一体なんのために、誰のために、このようなウソの毎日を過ごさねばならないのかと。気がついたら、二十年の原発労働で、私の体も被曝でぼろぼろになっていました。


11.だれが助けるのか

 また、東京電力の福島原発で現場作業員がグラインダーで額(ひたい)を切って、大怪我をしたことがありました。血が吹き出ていて、一刻を争う大怪我でしたから、直ぐに救急車を呼んで運び出しました。ところが、その怪我人は放射能まみれだったのです。でも、電力会社もあわてていたので、防護服を脱がせたり、体を洗ったりする除洗をしなかった。救急隊員にも放射能汚染の知識が全くなかったので、その怪我人は放射能の除洗をしないままに、病院に運ばれてしまったんです。だから、その怪我人を触った救急隊員が汚染される、救急車も汚染される、医者も看護婦さんも、その看護婦さんが触った他の患者さんも汚染される、その患者さんが外へ出て、また汚染が広がるというふうに、町中がパニックになるほどの大変な事態になってしまいました。みんなが大怪我をして出血のひどい人を何とか助けたいと思って必死だっただけで、放射能は全く見えませんから、その人が放射能で汚染されていることなんか、だれも気が付かなかったんですよ。

 一人でもこんなに大変なんです。それが仮に大事故が起きて大勢の住民が放射能で汚染された時、一体どうなるのでしょうか。想像できますか。人ごとではないのです。この国の人、みんなの問題です。


12.びっくりした美浜原発細管破断事故!

 皆さんが知らないのか、無関心なのか、日本の原発はびっくりするような大事故を度々起こしています。スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する大事故です。1989年に、東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故も、世界で初めての事故でした。

 そして、1991年2月に、関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。

 チェルノブイリの事故の時には、私はあまり驚かなかったんですよ。原発を造っていて、そういう事故が必ず起こると分かっていましたから。だから、ああ、たまたまチェルノブイリで起きたと、たまたま日本ではなかったと思ったんです。しかし、美浜の事故の時はもうびっくりして、足がガクガクふるえて椅子から立ち上がれない程でした。

 この事故はECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で動かして原発を止めたという意味で、重大な事故だったんです。ECCSというのは、原発の安全を守るための最後の砦に当たります。これが効かなかったらお終りです。だから、ECCSを動かした美浜の事故というのは、一億数千万人の人を乗せたバスが高速道路を100キロのスピードで走っているのに、ブレーキもきかない、サイドブレーキもきかない、崖にぶつけてやっと止めたというような大事故だったんです。

 原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、炉が空焚きになる寸前だったのです。日本が誇る多重防護の安全弁が次々と効かなくて、あと0.7秒でチェルノブイリになるところだった。それも、土曜日だったのですが、たまたまベテランの職員が来ていて、自動停止するはずが停止しなくて、その人がとっさの判断で手動で止めて、世界を巻き込むような大事故に至らなかったのです。日本中の人が、いや世界中の人が本当に運がよかったのですよ。

 この事故は、2ミリくらいの細い配管についている触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わないようにしてある金具が設計通りに入っていなかったのが原因でした。施工ミスです。そのことが二十年近い何回もの定検でも見つからなかったんですから、定検のいい加減さがばれた事故でもあった。入らなければ切って捨てる、合わなければ引っ張るという、設計者がまさかと思うようなことが、現場では当たり前に行われているということが分かった事故でもあったんです。


13.もんじゅの大事故

 去年(1995年)の12月8日に、福井県の敦賀にある動燃(動力炉・核燃料開発事業団)のもんじゅでナトリウム漏れの大事故を起こしました。もんじゅの事故はこれが初めてではなく、それまでにも度々事故を起こしていて、私は建設中に六回も呼ばれて行きました。というのは、所長とか監督とか職人とか、元の部下だった人たちがもんじゅの担当もしているので、何か困ったことがあると私を呼ぶんですね。もう会社を辞めていましたが、原発だけは事故が起きたら取り返しがつきませんから、放っては置けないので行くのです。

 ある時、電話がかかって、「配管がどうしても合わないから来てくれ」という。行って見ますと、特別に作った配管も既製品の配管もすべて図面どおり、寸法通りになっている。でも、合わない。どうして合わないのか、いろいろ考えましたが、なかなか分からなかった。一晩考えてようやく分かりました。もんじゅは、日立、東芝、三菱、富士電機などの寄せ集めのメーカーで造ったもので、それぞれの会社の設計基準が違っていたのです。

 図面を引くときに、私が居た日立は0.5mm切り捨て、東芝と三菱は0.5mm切上げ、日本原研は0.5mm切下げなんです。たった0.5mmですが、百カ所も集まると大変な違いになるのです。だから、数字も線も合っているのに合わなかったのですね。

 これではダメだということで、みんな作り直させました。何しろ国の威信がかかっていますから、お金は掛けるんです。

 どうしてそういうことになるかというと、それぞれのノウ・ハウ、企業秘密ということがあって、全体で話し合いをして、この0.5mmについて、切り上げるか、切り下げるか、どちらかに統一しようというような話し合いをしていなかったのです。今回のもんじゅの事故の原因となった温度センサーにしても、メーカー同士での話し合いもされていなかったんではないでしょうか。

 どんなプラントの配管にも、あのような温度計がついていますが、私はあんなに長いのは見たことがありません。おそらく施工した時に危ないと分かっていた人がいたはずなんですね。でも、よその会社のことだからほっとけばいい、自分の会社の責任ではないと。

 動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起きないほうが不思議なんで、起こって当たり前なんです。

 しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。美浜原発の大事故の時と同じように「事象があった」と言っていました。私は事故の後、直ぐに福井県の議会から呼ばれて行きました。あそこには15基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。だから、私はそういう人に何時も、「事故が起きたらあなた方のせいだよ、反対していた人には責任はないよ」と言ってきました。この度、その議員さんたちに呼ばれたのです。「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたらよいか教えてほしい」と相談を受けたのです。

 それで、私がまず最初に言ったことは、「これは事故なんです、事故。事象というような言葉に誤魔化されちゃあだめだよ」と言いました。県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ! 事故!」と議員が叫んでいたのが、テレビで写っていましたが、あれも、黙っていたら、軽い「事象」ということにされていたんです。地元の人たちだけではなく、私たちも、向こうの言う「事象」というような軽い言葉に誤魔化されてはいけないんです。

 普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。この国が事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないのです。


14.日本のプルトニウムがフランスの核兵器に?

 もんじゅに使われているプルトニウムは、日本がフランスに再処理を依頼して抽出したものです。再処理というのは、原発で燃やしてしまったウラン燃料の中に出来たプルトニウムを取り出すことですが、プルトニウムはそういうふうに人工的にしか作れないものです。

 そのプルトニウムがもんじゅには約1.4トンも使われています。長崎の原爆は約8キロだったそうですが、一体、もんじゅのプルトニウムでどのくらいの原爆ができますか。それに、どんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。半減期が二万四千年もあるので、永久に放射能を出し続けます。だから、その名前がプルートー、地獄の王という名前からつけられたように、プルトニウムはこの世で一番危険なものといわれるわけですよ。

 しかし、日本のプルトニウムが去年(1995年)南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性が大きいことを知っている人は、余りいません。フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別がないのです。だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまったことはほとんど間違いありません。

 日本がこの核実験に反対をきっちり言えなかったのには、そういう理由があるからです。もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったのです。つまり、再処理の契約を止めればよかったんです。でも、それをしなかった。

 日本とフランスの貿易額で二番目に多いのは、この再処理のお金なんですよ。国民はそんなことも知らないで、いくら「核実験に反対、反対」といっても仕方がないんじゃないでしょうか。それに、唯一の被爆国といいながら、日本のプルトニウムがタヒチの人々を被爆させ、きれいな海を放射能で汚してしまったに違いありません。

 世界中が諦めたのに、日本だけはまだこんなもので電気を作ろうとしているんです。普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマルをやろうとしています。しかし、これは非常に危険です。分かりやすくいうと、石油ストーブでガソリンを燃やすようなことなんです。原発の元々の設計がプルトニウムを燃すようになっていません。プルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいんです。だから原爆の材料にしているわけですから。

 いくら資源がない国だからといっても、あまりに酷すぎるんじゃないでしょうか。早く原発を止めて、プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あちこちで被曝者が増えていくばかりです。


15.日本には途中でやめる勇気がない

 世界では原発の時代は終わりです。原発の先進国のアメリカでは、2月(1996年)に2015年までに原発を半分にすると発表しました。それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めています。あんなに怖い物、研究さえ止めました。

 もんじゅのようにプルトニウムを使う原発、高速増殖炉も、アメリカはもちろんイギリスもドイツも止めました。ドイツは出来上がったのを止めて、リゾートパークにしてしまいました。世界の国がプルトニウムで発電するのは不可能だと分かって止めたんです。日本政府も今度のもんじゅの事故で「失敗した」と思っているでしょう。でも、まだ止めない。これからもやると言っています。

 どうして日本が止めないかというと、日本にはいったん決めたことを途中で止める勇気がないからで、この国が途中で止める勇気がないというのは非常に怖いです。みなさんもそんな例は山ほどご存じでしょう。

 とにかく日本の原子力政策はいい加減なのです。日本は原発を始める時から、後のことは何にも考えていなかった。その内に何とかなるだろうと。そんないい加減なことでやってきたんです。そうやって何十年もたった。でも、廃棄物一つのことさえ、どうにもできないんです。

 もう一つ、大変なことは、いままでは大学に原子力工学科があって、それなりに学生がいましたが、今は若い人たちが原子力から離れてしまい、東大をはじめほとんどの大学からなくなってしまいました。机の上で研究する大学生さえいなくなったのです。

 また、日立と東芝にある原子力部門の人も三分の一に減って、コ・ジェネレーション(電気とお湯を同時に作る効率のよい発電設備)のガス・タービンの方へ行きました。メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っているのです。

 原子力局長をやっていた島村武久さんという人が退官して、『原子力談義』という本で、「日本政府がやっているのは、ただのつじつま合わせに過ぎない、電気が足りないのでも何でもない。あまりに無計画にウランとかプルトニウムを持ちすぎてしまったことが原因です。はっきりノーといわないから持たされてしまったのです。そして日本はそれらで核兵器を作るんじゃないかと世界の国々から見られる、その疑惑を否定するために核の平和利用、つまり、原発をもっともっと造ろうということになるのです」と書いていますが、これもこの国の姿なんです。


16.廃炉も解体も出来ない原発

 1966年に、日本で初めてイギリスから輸入した16万キロワットの営業用原子炉が茨城県の東海村で稼動しました。その後はアメリカから輸入した原発で、途中で自前で造るようになりましたが、今では、この狭い日本に135万キロワットというような巨大な原発を含めて51の原発が運転されています。

 具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えないままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになるんです。だから、最初、耐用年数は十年だと言っていて、十年で廃炉、解体する予定でいました。しかし、1981年に十年たった東京電力の福島原発の一号機で、当初考えていたような廃炉・解体が全然出来ないことが分かりました。このことは国会でも原子炉は核反応に耐えられないと、問題になりました。

 この時、私も加わってこの原子炉の廃炉、解体についてどうするか、毎日のように、ああでもない、こうでもないと検討をしたのですが、放射能だらけの原発を無理やりに廃炉、解体しようとしても、造るときの何倍ものお金がかかることや、どうしても大量の被曝が避けられないことなど、どうしようもないことが分かったのです。原子炉のすぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、たった十数秒くらいしかいられないんですから。

 机の上では、何でもできますが、実際には人の手でやらなければならないのですから、とんでもない被曝を伴うわけです。ですから、放射能がゼロにならないと、何にもできないのです。放射能がある限り廃炉、解体は不可能なのです。人間にできなければロボットでという人もいます。でも、研究はしていますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使えないのです。

 結局、福島の原発では、廃炉にすることができないというので、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられない程の大量の被曝をさせて、原子炉の修理をしたのです。今でもその原発は動いています。

 最初に耐用年数が十年といわれていた原発が、もう三十年近く動いています。そんな原発が11もある。くたびれてヨタヨタになっても動かし続けていて、私は心配でたまりません。

 また、神奈川県の川崎にある武蔵工大の原子炉はたった100キロワットの研究炉ですが、これも放射能漏れを起こして止まっています。机上の計算では、修理に20億円、廃炉にするには60億円もかかるそうですが、大学の年間予算に相当するお金をかけても廃炉にはできないのです。まず停止して放射能がなくなるまで管理するしかないのです。

 それが100万キロワットというような大きな原発ですと、本当にどうしようもありません。


17.「閉鎖」して、監視・管理

 なぜ、原発は廃炉や解体ができないのでしょうか。それは、原発は水と蒸気で運転されているものなので、運転を止めてそのままに放置しておくと、すぐサビが来てボロボロになって、穴が開いて放射能が漏れてくるからです。原発は核燃料を入れて一回でも運転すると、放射能だらけになって、止めたままにしておくことも、廃炉、解体することもできないものになってしまうのです。

 先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。廃炉、解体ができないので、みんな「閉鎖」なんです。閉鎖とは発電を止めて、核燃料を取り出しておくことですが、ここからが大変です。

 放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けなければなりません。水の圧力で配管が薄くなったり、部品の具合が悪くなったりしますから、定検もしてそういう所の補修をし、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないのです。 

 今、運転中が51、建設中が3、全部で54の原発が日本列島を取り巻いています。これ以上運転を続けると、余りにも危険な原発もいくつかあります。この他に大学や会社の研究用の原子炉もありますから、日本には今、小さいのは100キロワット、大きいのは135万キロワット、大小合わせて76もの原子炉があることになります。

 しかし、日本の電力会社が、電気を作らない、金儲けにならない閉鎖した原発を本気で監視し続けるか大変疑問です。それなのに、さらに、新規立地や増設を行おうとしています。その中には、東海地震のことで心配な浜岡に五機目の増設をしようとしていたり、福島ではサッカー場と引換えにした増設もあります。新設では新潟の巻町や三重の芦浜、山口の上関、石川の珠洲、青森の大間や東通などいくつもあります。それで、2010年には70~80基にしようと。実際、言葉は悪いですが、この国は狂っているとしか思えません。

 これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。近い将来、閉鎖された原発が日本国中いたるところに出現する。これは不安というより、不気味です。ゾーとするのは、私だけでしょうか。


18.どうしようもない放射性廃棄物

 それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、毎日、出ています。低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間もいたら、致死量の被曝をするようなものもあります。そんなものが全国の原発で約80万本以上溜まっています。

 日本が原発を始めてから1969年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。その頃はそれが当たり前だったのです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。

 しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思ったのは、このことからでした。海に捨てたドラム缶は一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどうなるのだろうか、魚はどうなるのだろうかと思ったのがはじめでした。

 現在は原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行っています。全部で300万本のドラム缶をこれから三百年間管理すると言っていますが、一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間も続くのかどうか。どうなりますか。

 もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んでいます。去年(1995年)フランスから、28本の高レベル廃棄物として返ってきました。これはどろどろの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、三十年から五十年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全く決まっていません。余所の国でも計画だけはあっても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はありません。みんな困っています。

 原発自体についても、国は止めてから五年か十年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなことを言っていますが、それでも1基で数万トンくらいの放射能まみれの廃材が出るんですよ。生活のゴミでさえ、捨てる所がないのに、一体どうしようというんでしょうか。とにかく日本中が核のゴミだらけになる事は目に見えています。早くなんとかしないといけないんじゃないでしょうか。それには一日も早く、原発を止めるしかないんですよ。

 私が五年程前に、北海道で話をしていた時、「放射能のゴミを五十年、三百年監視続ける」と言ったら、中学生の女の子が、手を挙げて、「お聞きしていいですか。今、廃棄物を五十年、三百年監視するといいましたが、今の大人がするんですか? そうじゃないでしょう。次の私たちの世代、また、その次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私たちはいやだ」と叫ぶように言いました。この子に返事の出来る大人はいますか。

 それに、五十年とか三百年とかいうと、それだけ経てばいいんだというふうに聞こえますが、そうじゃありません。原発が動いている限り、終わりのない永遠の五十年であり、三百年だということです。


19.住民の被曝と恐ろしい差別

 日本の原発は今までは放射能を一切出していませんと、何十年もウソをついてきた。でもそういうウソがつけなくなったのです。

 原発にある高い排気塔からは、放射能が出ています。出ているんではなくて、出しているんですが、二四時間放射能を出していますから、その周辺に住んでいる人たちは、一日中、放射能をあびて被曝しているのです。

 ある女性から手紙が来ました。二三歳です。便箋に涙の跡がにじんでいました。「東京で就職して恋愛し、結婚が決まって、結納も交わしました。ところが突然相手から婚約を解消されてしまったのです。相手の人は、君には何にも悪い所はない、自分も一緒になりたいと思っている。でも、親たちから、あなたが福井県の敦賀で十数年間育っている。原発の周辺では白血病の子どもが生まれる確率が高いという。白血病の孫の顔はふびんで見たくない。だから結婚するのはやめてくれ、といわれたからと。私が何か悪いことしましたか」と書いてありました。この娘さんに何の罪がありますか。こういう話が方々で起きています。

 この話は原発現地の話ではない、東京で起きた話なんですよ、東京で。皆さんは、原発で働いていた男性と自分の娘とか、この女性のように、原発の近くで育った娘さんと自分の息子とかの結婚を心から喜べますか。若い人も、そういう人と恋愛するかも知れないですから、まったく人ごとではないんです。こういう差別の話は、言えば差別になる。でも言わなければ分からないことなんです。原発に反対している人も、原発は事故や故障が怖いだけではない、こういうことが起きるから原発はいやなんだと言って欲しいと思います。原発は事故だけではなしに、人の心まで壊しているのですから。


20.私、子ども生んでも大丈夫ですか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ。

 最後に、私自身が大変ショックを受けた話ですが、北海道の泊原発の隣の共和町で、教職員組合主催の講演をしていた時のお話をします。どこへ行っても、必ずこのお話はしています。あとの話は全部忘れてくださっても結構ですが、この話だけはぜひ覚えておいてください。

 その講演会は夜の集まりでしたが、父母と教職員が半々くらいで、およそ300人くらいの人が来ていました。その中には中学生や高校生もいました。原発は今の大人の問題ではない、私たち子どもの問題だからと聞きに来ていたのです。

 話が一通り終わったので、私が質問はありませんかというと、中学二年の女の子が泣きながら手を挙げて、こういうことを言いました。 

 「今夜この会場に集まっている大人たちは、大ウソつきのええかっこしばっかりだ。私はその顔を見に来たんだ。どんな顔をして来ているのかと。今の大人たち、特にここにいる大人たちは農薬問題、ゴルフ場問題、原発問題、何かと言えば子どもたちのためにと言って、運動するふりばかりしている。私は泊原発のすぐ近くの共和町に住んで、二四時間被曝している。原子力発電所の周辺、イギリスのセラフィールドで白血病の子どもが生まれる確率が高いというのは、本を読んで知っている。私も女の子です。年頃になったら結婚もするでしょう。私、子ども生んでも大丈夫なんですか?」と、泣きながら300人の大人たちに聞いているのです。でも、誰も答えてあげられない。

 「原発がそんなに大変なものなら、今頃でなくて、なぜ最初に造るときに一生懸命反対してくれなかったのか。まして、ここに来ている大人たちは、二号機も造らせたじゃないのか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ」と。ちょうど、泊原発の二号機が試運転に入った時だったんです。

 「何で、今になってこういう集会しているのか分からない。私が大人で子どもがいたら、命懸けで体を張ってでも原発を止めている」と言う。

 「二基目が出来て、今までの倍私は放射能を浴びている。でも私は北海道から逃げない」って、泣きながら訴えました。

 私が「そういう悩みをお母さんや先生に話したことがあるの」と聞きましたら、「この会場には先生やお母さんも来ている、でも、話したことはない」と言います。「女の子同志ではいつもその話をしている。結婚もできない、子どもも産めない」って。

 担任の先生たちも、今の生徒たちがそういう悩みを抱えていることを少しも知らなかったそうです。

 これは決して、原子力防災の8キロとか10キロの問題ではない、50キロ、100キロ圏でそういうことがいっぱい起きているのです。そういう悩みを今の中学生、高校生が持っていることを絶えず知っていてほしいのです。


21.原発がある限り、安心できない

 みなさんには、ここまでのことから、原発がどんなものか分かってもらえたと思います。

 チェルノブイリで原発の大事故が起きて、原発は怖いなーと思った人も多かったと思います。でも、「原発が止まったら、電気が無くなって困る」と、特に都会の人は原発から遠いですから、少々怖くても仕方がないと、そう考えている人は多いんじゃないでしょうか。

 でも、それは国や電力会社が「原発は核の平和利用です」「日本の原発は絶対に事故を起こしません。安全だから安心しなさい」「日本には資源がないから、原発は絶対に必要なんですよ」と、大金をかけて宣伝をしている結果なんです。もんじゅの事故のように、本当のことはずーっと隠しています。

 原発は確かに電気を作っています。しかし、私が二十年間働いて、この目で見たり、この体で経験したことは、原発は働く人を絶対に被曝させなければ動かないものだということです。それに、原発を造るときから、地域の人達は賛成だ、反対だと割れて、心をズタズタにされる。出来たら出来たで、被曝させられ、何の罪もないのに差別されて苦しんでいるんです。

 みなさんは、原発が事故を起こしたら怖いのは知っている。だったら、事故さえ起こさなければいいのか。平和利用なのかと。そうじゃないでしょう。私のような話、働く人が被曝して死んでいったり、地域の人が苦しんでいる限り、原発は平和利用なんかではないんです。それに、安全なことと安心だということは違うんです。原発がある限り安心できないのですから。

 それから、今は電気を作っているように見えても、何万年も管理しなければならない核のゴミに、膨大な電気や石油がいるのです。それは、今作っている以上のエネルギーになることは間違いないんですよ。それに、その核のゴミや閉鎖した原発を管理するのは、私たちの子孫なのです。

 そんな原発が、どうして平和利用だなんて言えますか。だから、私は何度も言いますが、原発は絶対に核の平和利用ではありません。

 だから、私はお願いしたい。朝、必ず自分のお子さんの顔やお孫さんの顔をしっかりと見てほしいと。果たしてこのまま日本だけが原子力発電所をどんどん造って大丈夫なのかどうか、事故だけでなく、地震で壊れる心配もあって、このままでは本当に取り返しのつかないことが起きてしまうと。これをどうしても知って欲しいのです。

 ですから、私はこれ以上原発を増やしてはいけない、原発の増設は絶対に反対だという信念でやっています。そして稼働している原発も、着実に止めなければならないと思っています。

 原発がある限り、世界に本当の平和はこないのですから。


優しい地球 残そう子どもたちに

 
筆者「平井憲夫さん」について:

1997年1月逝去。
1級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表、北陸電力能登(現・志賀)原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第2原発3号機運転差し止め訴訟原告証人。(「原発被曝労働者救済センター」は後継者がなく、閉鎖されました。)

</転載>


 ホンの4年前、ワタシはネット上でこれを読み「原発の危険性」に目覚めました。命を懸けて語りかける人間の言葉に「嘘」は無いと思えたことと、その後自分でもアレコレ調べて確信したからです。

 平井さんも、生きている間にみんなに「原発の危険性」に気付いて欲しかったでしょうし、それが叶っていれば、あのような事故は起こらなかったのに...。

 ま、それを言っても詮無き事。詮無き事。今となっては、みんなが「原発の危険性」に気付いてくれたことを「草葉の陰」で喜び、「原発廃止」に向けて応援してくれている事と思います。

 また、平井さん以外にも、「原子力産業」によって命を落とした人たち、重い障害を背負ってしまった人たちの「無念」を晴らすためにも、今ここで軽率な行動に走り、今までの諸先輩方の努力を台無しにしてはならないのです。ワタシたち自身の、


基本的人権を取り戻すためにも。



人間ナメんなよ!


でわっ!

2012年6月29日金曜日

戒厳令注意報!

         
 今日、6月28日の午後、北九州での突然の「ロケット砲」発見のニュース。NHKをはじめとする報道機関が報じていますが、ワタシ、「匂う」んですよね。このタイミングでの、このニュース報道。正直...


明日ヤヴァイかも?


<転載>

北九州、住宅街に銃火器 福岡県警が住民避難呼び掛け
2012年6月29日 00時10分

 28日午後2時ごろ、北九州市戸畑区浅生3丁目の2階建ての建物内で、ロケットランチャーや拳銃5丁、実弾数十発の銃火器があるのを、捜査のため立ち入った福岡県警の捜査員が見つけた。

 県警は建物が暴力団の武器庫の可能性があるとみて銃刀法違反などの容疑で調べている。

 県警と北九州市は、午後7時50分ごろ、周辺住民の安全確保のため半径25メートル以内に住む93世帯、計181人に避難を呼び掛け、約40分後に全員が近くの公共施設などに避難した。

 ロケットランチャーは濃い緑色の金属製の筒状で、長さ約70センチ。県警がエックス線で調べたところ砲弾が装てんされた状態だった。

(共同)

</転載>


 組織だった集会ではなく、ひとりひとりが自分の意思で抗議に集うのは素晴らしいことですが、逆に見ればそれだけ「工作員が紛れ込み易い」ということなんですよ。

 いいですか?人を集めることに、人が集まることに夢中になっていると、「足元をすくわれる」ことになります。人が多く集まれば集まるほど、「工作員」も活動がし易くなるワケです。

 具体的に言えば、予測もしなかったような「暴動」とか、「火器」の爆発、暴発事故でも発生したら、その場で警察官は鎮圧部隊に豹変するでしょうし、それによる混乱が拡大すれば、待ってましたとばかりに「戒厳令」を発令する事だって可能なワケです。

 「紫陽花革命」なんて言葉に舞い上がっている場合じゃありません。北九州での不自然な銃火器発見のニュースは、「戒厳令」を発令するための「フラグ」とも見て取れます。

 であれば対策は、「分散」することです。首相官邸前に10万人集まろうなどと呼びかけ、混乱が発生し易くなる状況を招くよりも、「分散」して同時多発抗議をする戦略の方がイイように思えます。

 経済産業省でもイイです。東京電力をはじめとする各電力会社本社前でもいいです。瓦礫の搬入、焼却を受け入れた各地方自治体の庁舎前でも、どこでもいいです。

 とにかく「分散」することです。首相官邸前にいくら人が集まったところで、警察側は日本中から応援を集めて待ち構えていることでしょう。であれば、地方は逆に手薄になるワケです。もしかしたら、その機を狙って「北九州」にロケットランチャーを隠しておいた輩がいるのかも知れません。

 つまり明日は、日本の警備が手薄になる可能性があるワケですよ。そんな中で、首相官邸前で「不測の事態」が発生すれば、「戒厳令」の絶好の口実を政府側に...野田首相に与えてしまうことになります。

 そうなってしまったら最後、のん気に「紫陽花革命」だなんて言ってられないワケです。「戒厳令」下では外出も集会も制限されて身動きが取れなくなり、「反原発」も「再稼動反対」も、まったく運動ができなくなるでしょうし、「ショック・ドクトリン」方式で、政府はますます国民を無視した政策を打ち出すことさえ可能です。


それだけは避けなければならない!


 政府に「戒厳令」を発令する口実を与えてはならないのです。過去にある程度の学生運動を経験し、挫折を味わった年配の方々でしたら、ワタシが警戒する意味を分って頂けると思います。そして、「闘い方」が未熟な若者を守ってあげて欲しいのです。

 再度、注意喚起をお願いします。


「戒厳令」だけは、絶対に回避する!


 そのためには、「戦力」を分散させることです。首相前官邸前に人を集めることが、原発廃止への唯一の道ではありません。前にも言ったように、


原子力は憲法違反


なのです。

 ワタシたちには、「日本国憲法」という「揺ぎ無い大義」があるのです。その大義を、「戒厳令」なんぞに踏みにじられてはならないのです。ツイッターで意見交換をして盛り上がるのもいいですが、みなさん頭を冷やして


もう一度、よく考えて下さい。


まだ、間に合います。


 例えあした人が集まらなくても、それで「再起動反対抗議」が終わることはありません。「原発廃止」の声が弾圧されることはありません。続ければイイだけの話です。

 「主権」を国民に取り戻すのは、斯くも「骨の折れる仕事」なのです。それをやり遂げるタフな精神力がなければ...「長い道のり」を行く覚悟がなければ...将来の日本人に託す「真の民主主義」は確立できないのです。




人間ナメんなよ!


でわっ!

2012年6月26日火曜日

世界の利権構造の中での原子力


 エジプトの新大統領が、すったもんだの末にようやく選出されました。


<転載>

エジプト新大統領
国民に向け初の演説

25.06.2012, 09:43



エジプトの新大統領に選出されたムハムメド・ムルシ氏は、24日夕方、初めて国民に向け演説し、その模様は国営テレビで中継された。ムルシ新大統領は演説の中で、エジプトの人々に国民的結束を呼びかけ、国際社会には、同国が負ったあらゆる義務を守ると約束した。

エジプト中央選挙委員会は24日、イスラム運動体「ムスリム同胞団」の政治組織である自由公正党から立候補したムルシ氏が、51.7%の得票を集め選挙に勝利したと発表した。その後、ムルシ氏は「自分はすべてのエジプト人のための大統領となる」と述べ、自由公正党の戦列を離れた。

国民に宛てたメッセージの中で新大統領はまず、昨年初めムバラク政権に対する国民蜂起の際に亡くなった人々の家族及び負傷者に感謝の言葉を述べ、さらに次のように続けた―

エジプト人すべては、法の前に平等であり、司法は独立したものとなるだろう。政府は、互恵を基盤に相手の利益を尊重しながら、あらゆる国々とバランスのとれた関係を築いてゆく。 エジプトにとって肝心なのは、 国民的統一を守る事だ。 私は、国の経済の真の意味での発展を開始させる考えだ。」

リア・ノーヴォスチ

</転載>


 で、ワタシとしては、あまりイイ兆候ではないように思えるワケです。今後のシリア情勢に、更なる悪影響を及ぼすのではないかと...。

 ひとつに、ムスリム同胞団はイギリスの工作機関を母体としていること。そして、ムスリム同胞団がイスラム教「スンニ派」だということです。


<転載>

エジプト:大統領選に暗雲…
前政権幹部出馬、軍部後押しか

毎日新聞 2012年04月14日 21時29分(最終更新 04月15日 01時23分)

 「春」以降、沈黙していたスレイマン氏が出馬表明したのは立候補締め切り2日前の6日。軍人出身の土壇場の決断に、エジプトを暫定統治する軍最高評議会が権益保持のため「独自候補」として後押ししたと議論が沸いた。スレイマン氏は否定したが、軍は王制を打倒した52年のクーデター以来の「体制派」で、世論の間には今後の民政移管への不安も高まっている。

 これに対し同胞団は今月初め、米ワシントンに代表団を送り、米当局者との関係構築を模索した。カーニー米大統領報道官は同胞団を「今のエジプトで重要な役割を果たしている」と評した。

 同胞団の視野に「政権」があるのは明らかで、同胞団が第1党の人民議会は12日、前政権幹部の大統領選出馬を禁じる法案を可決し、スレイマン氏排除に動いた。法案は最終的に軍最高評議会の承認が必要で、実際に立候補できなくなるかどうかは微妙だが、双方の対立は今後さらに深まりそうだ。

</転載>


 この記事を読めば、ムスリム同胞団とアメリカが「デキてる」のが見て取れます。エジプト軍がアメリカ軍の援助を受けていているのは確かですが、それは第一次から第四次までの中東戦争にて、エジプト軍はイスラエル軍に勝てなかったからで、アメリカの近代的兵器欲しさに歩み寄っていた側面も考えられ、アメリカはアメリカで、そうしたエジプトの内部事情をイスラエルにリークするのに都合が良かったので、表向きは協力したのでしょう。商売にもなるし。

 で、表向きはどうであろうと、アメリカ、イギリス、イスラエルは強い同盟関係にあり、中東は彼らの手の内にあるワケです。したがって、「アラブの春」なんぞは「仕組まれた芝居」に過ぎず、「革命」というキャッチコピーに踊らされていたに過ぎないのです。

 で、更に掘り下げると、なんで?そうした策略に易々と「アラブ」が翻弄されるのか?という疑問が沸いてきますが、その答えのひとつとして、イスラム教内部の「宗派対立」があると考えられます。

 はじめに書きましたが、ムスリム同胞団は「スンニ派」であり、「シーア派」とは、ほぼ?敵対関係にあると言っても過言ではなく、同じイスラム教徒でありながら抗争を繰り返しています。


スンナ派 - wikipedia


 どちらかと言えば?「好戦的」なのは「スンニ派」の方で、マホメットからの「系統」を重んじる「シーア派」に対して、そうした「絶対価値」を持たない「スンニ派」は、宗派として多数派であるにも拘らず...いや、多数派であるが故に、「一子相伝」的な「シーア派」にある種の「コンプレックス」を抱き、それが過激な行動に「スンニ派」を駆り立て、他の宗派に対して過剰に「スンニ派」を誇示しようとするのでしょう。

 これを解りやすく説明すると、「北斗の拳」における、


ラオウとケンシロウ


の関係に近いのかも知れません。

 
<転載>

イラクで一連の爆弾テロ 死者60人以上
13.06.2012, 17:27



13日イラクでイスラム教シーア派の巡礼者を標的にした爆弾テロが続き、AP通信によれば63人が犠牲となった。首都バクダッドで5つの爆弾が爆発したほか、別の町でも爆破テロが起こり、武装集団による攻撃も2件あった。

 中部のヒッラーでは、爆発装置の一つが車に据えつけられ、それを自爆テロ犯が操作した。テロは、地元の警察関係者に人気があるレストランの近くで発生、少なくとも22人が死亡、38人が負傷した。

 首都バクダッドでは、爆弾が積まれた自動車2台が爆発で粉々になり4人が亡くなった。

 イタル・タス通信の情報では、今のところ一連の爆弾テロ事件に対し、犯行声明を出したものはいない。

 イラク領内では、スンニ派過激派戦闘グループ「カイダ・アル-ジハド」の戦闘員らが積極的に活動し、シーア派信徒や軍人、警察官に対する攻撃を繰り返している。

</転載>


 で、現在シリア国内で起きている事態を、ウwさんのとこでも取り上げているのですが、「ROCKWAY EXPRESS」さんのとこで紹介された、「ギリシャ正教修道院長の証言」と一致します。


シリア虐殺の嘘
2012年6月13日  田中 宇


 ギリシャ正教修道院長は、「シリア国外のスンニ派のテロリストが、シリアの市民に対して犯罪行為を行っている。」と証言し、ウwさんの記事ではもっと生々しい状況が描写されています。


アルカーイダ - wikipedia

アルカーイダ(アラビア語: القاعدة‎, al-qāʿidah, 英語: Al-Qaeda)は、イスラーム主義(イスラーム原理主義)と反米・反ユダヤを標榜するスンニ派ムスリムによるイスラーム過激派国際ネットワーク。1990年代以降、主としてアメリカ合衆国を標的とした数々のテロ行為を実行したとされ、特に2001年に実行したアメリカ同時多発テロ事件は世界に大きな衝撃を与えた。


ターリバーン - wikipedia

ターリバーン(طالبان、Tālibān、英:Taliban)は、パキスタンとアフガニスタンで活動するイスラム主義運動。1996年から2001年11月頃までアフガニスタンの大部分を実効支配し、アフガニスタン・イスラーム首長国(ターリバーン政権)を樹立した(国際的には一部国家を除いて承認されず)。日本では通常タリバン(またはタリバーン)と表記される。


ハマース

ハマース(حماس、Ḥamās)は、イスラーム主義を掲げるパレスチナの政党。1987年12月14日にアフマド・ヤースィーンによってムスリム同胞団のパレスチナ支部を母体として創設された。

設立
1980年代の第1次インティファーダ時代に、ヤーセル・アラファートが指揮するパレスチナ解放機構 (PLO) の影響力を排除した民衆レベルでの対イスラエル抵抗組織として設立された。ハマースとPLOの対立関係を見たイスラエル政府は、ハマースがPLOに対抗する勢力となることを期待して、秘密裡に援助をおこなっていた。ハマースは教育、医療、福祉などの分野で一般民衆への地道な活動を続けたため、パレスチナ人の間で支持が拡大していった。


 で、シリアですが、スンニ派が国民の多数派を占めているワケですが、歴史的に見ると、オスマン帝国(トルコ)から独立した後にフランスの統治下に置かれその後独立国となるのですが、一時期(1958年)は エジプトと合体して「アラブ連合共和国」を名乗っていました。

 時期的には、第二次中東戦争(1956年10月29日~1957年5月)の翌年ですから、目的がイスラエルに対する警戒と包囲であるのは明らかです。

 つまりエジプトとシリアは、対イスラエル(対シオニスト)という点で非常に関係が深いワケです。そして、フランスによるシリア統治時代、統治を任されたのが少数派の「アラウィー派」で、その流れが現在のアサド政権に連なります。


資料: 地理B( 西アジア)


1.イスラム社会(A:シーア派が多数派、B:スンナ派が多数派)

アフガニスタン・イスラム共和国
 パシュトゥン人(38%)他、ダリ語(ペルシャ語系)、パシュトゥー語
 イスラム教(国教・スンナ派)

イラン・イスラム共和国
 イラン人、ペルシャ語、クルド人
 イスラム教(シーア派)

トルコ共和国
 トルコ人、クルド人、トルコ語
 イスラム教(スンナ派)

④レバノン共和国
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教、キリスト教

シリア・アラブ共和国
 アラブ人、クルド人、アラビア語
 イスラム教(スンナ派)→アサド政権は、アラウィー派(加筆)

ヨルダン・ハシミテ王国
 アラブ人(パレスチナ系が50%)、アラビア語
 イスラム教(国教、スンナ派)

イラク共和国
 アラブ人、クルド人、アラビア語
 イスラム教(シーア派)→フセイン政権は、スンナ派

クウェート国
 クウェート人(50%)、アラブ人、東南アジア系、アラビア語
 イスラム教(国教・スンナ派)

バーレーン王国
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教(シーア派)

カタール国
 アラブ系(25%)、イラン人、インド人、パレスチナ人、
 パキスタン人など外国移民、アラビア語
 イスラム教(スンナ派)

アラブ首長国連邦
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教(スンナ派)

⑫オマーン国
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教

⑬イエメン共和国
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教(国教)

サウジアラビア王国
 アラブ人、アラビア語
 イスラム教(スンナ派)


 少数派の支配に反対する多数派の反乱という見方では、ミャンマーもシリアに状況が似ていましたが、ミャンマーの場合はイギリスに対する蜂起であり、利害が一致した日本も加勢して宗主国を追い出したワケであり、ミャンマーはその後も再植民地化を拒み、自力で独立を勝ち取ったワケです。

 その点シリアの場合、フランスは自ら引き上げたワケですから、その後残されたシリア国民の大多数を占める「スンニ派」の国民が、少数派の「アラウィー派」を追い出そうと思えば不可能ではなかったはずです。

 ま、中東戦争の最中、イスラエルという共通の敵を目の前にして国内が団結していたこともあるでしょうが、「アラウィー派」の政治が、そこそこ国民に受け入れられていた証明でもないでしょうか?それが、「アラブの春」と呼ばれる一連の「革命」の余波を受け、シリア国内もオカシクなって来たワケです。

 で、「アラブの春」の指導的役割を担っているのは「スンニ派」であり、そのことは、西側と歩調を合わせる「スンニ派国家」であるトルコの動向にも表れています。


<転載>

何のためにシリアの対空防衛能力を試すのか
25.06.2012, 14:41



 シリア対空防衛軍がトルコの偵察機RF-4Eファントムを撃墜したことを様々な角度から検討してみると、実際に諜報的な任務を負っていたことが指摘されている。政治学者のスタニスラフ・タラソフ氏は次のように述べている。

 -トルコのアフメト・ダウトオール外相は、航空機が偵察機であったことを認めました。目的はトルコのレーダーシステムのチェックでした。外相も言っているように、「撃墜の15分前に航空機は短い時間シリアの領空を侵犯」していたのです。専門家なら分かりますが、そのような時間はシリアの対空防衛システムを写真に収めるのに十分な時間です。何のためにシリアの対空防衛システムを調べることが必要だったのでしょうか。また誰にとって必要だったのでしょうか。

 国際世論のなかでは、欧米諸国がシリアにおいてリビア的シナリオを繰り返そうとしているのではないかという見方が強まっている。つまり、国連安全保障理事会決議を待たずして、またロシアが提案しているシリアに関する国際会議を無視して、武力介入するということだ。そのような武力介入となれば、トルコが大きな役割を果たすことになる。最近米国の新聞「ニューヨークタイムズ」は、米国の指揮の下、トルコ領内からシリア反対派勢力に対する武器供給が行われていることを報じた。シリア国境地帯にはいわいる「自由シリア軍」が集結しており、シリア領内への攻撃を行っている。

(後略)

</転載>


 さて、上記の様々な状況を踏まえた上で、ムスリム同胞団(スンニ派)からエジプトの新大統領が選出された意味を考えると、最初に述べたように、


シリアの情勢に悪影響を及ぼす。


という推測が、ワタシのなかでは組み上がるワケです。はい。

 恐らくエジプトは新大統領の下、近日中にシリア介入に舵を切るでしょうし、そうなるとシリアは、かつて「一心同体」であった国まで敵に回すことになり、八方塞り、四面楚歌。アサド大統領の辞任は避けようもないのですが、


「それだけじゃ済まないよw?」


と、イスラエルが言い出しているワケです。


<転載>

シリア大統領辞任は問題解決ではない
イスラエル外相 24.06.2012, 17:11



 イスラエルは、シリアのバシャル・アサド大統領が辞任しても国内の問題は解決されないとの考えを示した。プーチン大統領が25日にイスラエルを実務訪問するのを前に、イスラエルのリーベルマン外相がインターファックス通信とのインタビューで明らかにした。

 シリアでの状況は、プーチン氏のイスラエル訪問中に議論される。リーベルマン外相は、エジプト、チュニジア、シリアなどにおけるアラブ世界での抗議活動の原因は、まずは高い失業率、低い生活水準、知識層の将来がないことなどだと指摘し、それゆえに改革が必要であるとまとめている。雇用の創出、資本・投資の呼び込みが問題となっている。

インターファックス

</転載>


エコノミックヒットマン #TPP




 要は、アサド大統領が辞任しても、シリア国内の混乱は収まらない(収めるつもりは無い)と脅迫しているワケで、じゃあ、この混乱の最終目的地は何処なのか?...と、考えるに、


第三次世界大戦


という不吉な文字が頭を過ぎるワケです。つまり「アラブの春」にしても、最初からそれに向かって「仕組まれていた」という推論が生まれ、何故そんなチガイじみた犯罪行為を企てるのか?を想像するに、そこに...


金融破綻の穴埋め


という格好の理由が...。



 で、今はロシアが頑張っているワケですが、西側諸国が勝手にシリアに軍事介入し、シリアの人々が戦火に巻き込まれて命を落とすのを見かねたロシアが介入となれば、それこそ火に油を注ぐことになります。

 かといって、シリアの人々を見殺しにするのは、内戦を煽っている連中に屈してしまうことになり、


世界の秩序の崩壊


を招くことになるのですが、ロシアがいくら強国でも、一国では手が出せない悩ましい状況なワケですよ。

 であれば、ロシアに協力し、理不尽な言いがかりによる不正行為を正そうという、「近代理性」に目覚めた国々、国際世論が結束するしかないでしょw!

 国際世論で、シリアへの不法介入を止めさせるしかないでしょw!

 戦争を望んでいる人なんて、「金融家」ぐらいなもんでしょ?日本の反原発運動にアメリカの市民が共鳴してくれたように、シリアの人たちの苦しみに対しても、世界中のフツーの人たちが心を痛めているはずです。


シリアに平和を!


と。

 で、シリアの問題は「脱原発」とも無関係ではないのです。「原子力ネットワーク」は世界的な枠組みの中にあるワケですから、日本だけの問題ではないという事です。日本以外の国の...外国の思惑も絡んでいるワケです。

 日本だけの問題であれば、首相官邸前に45,000人も人が集まれば日本独自で原発廃止も可能でしょうが、「原子力産業」は、ビジネス(利権)として世界中に広がっているワケです。

 もちろん「良いビジネス」のはずがありません。「原発」を抱える国は、必ず「被爆者」をも同時に抱えています。そのビジネスによって、「傷つく人」が必ず存在します。それでも経済=お金=利権のために止められない(止める気が無い)のです。

 そういった、世界中に蔓延る利権の構図を踏まえた上でないと、本当の闘いにはならないのです。「ボスキャラ」は、野田首相なんかよりずっと大きい存在だということです。

 それでもワタシたちが、日本国憲法<前文>に記された、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」...の精神と自らの良心を信じ、


6月29日(金)


首相官邸前であれ、経済産業省前であれ、各地方自治体の庁舎前であれ、世界を巻き込んだ「脱原発」の決意表明ができたのなら、世界は大きく変わることでしょう。

 そのくらいの「想像力」を持たないと、「革命」のその先の世界を描けないと、単に人がたくさん集まったくらいでは、「原発廃止」は成し得ないと思うワケです。


ひとりひとりの「戦力」=「想像力」


にかかっていると思うワケです。




人間ナメんなよ!


でわっ!