2013年9月6日金曜日

アメリカの事情

  
 国連の「P5」であるアメリカが、国連本部で国連を批判するってのも、ものすごく矛盾した行動に映るワケです。


パラノイアか?


・・・と。


【日経】米国連大使「ロシア、安保理を人質に」 シリア巡り批判
2013/9/6 12:10

【ニューヨーク=杉本貴司】米国のパワー国連大使は5日、シリア情勢に関して「安全保障理事会に前途はない」と国連本部で記者団に語った。シリアのアサド政権を擁護するロシアが「安保理を人質にとり、国際的な義務を縮小させている」と厳しく批判。安保理によるシリア制裁決議を経た対応が困難との認識を示した。

 パワー大使は「安保理はガス(化学兵器)で亡くなった何百ものシリアの子どもを守れず、地域の安全も守れなかったのに、アサド政権のパトロンであるロシアの特権を守っている」と述べ、ロシアを名指しして痛烈に批判した。「この危機に取り組むために世界が必要としている安保理は、現在の安保理ではない」と強調した。

 シリア問題を巡っては米欧が主導したシリア制裁決議案をロシアが3度にわたり拒否権を行使してつぶした経緯がある。8月にも英国が実質的に武力介入を認める決議を常任理事国5カ国に提案したが、ロシアの反対で頓挫した。

 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は安保理による決議を経たうえでの解決を訴えかけている。5日のパワー大使の発言は安保理での決議採択が不可能との認識を示したものだ。


 サリンを使用した犯人を特定するのが先なのに、誰がサリンを使用したかよりも、これ以上サリンが使われないように「人道的」に介入する・・・という理屈なワケですよね?

 ベトナム戦争の時と何も変わっていないワケですよ、アメリカは。

 藪の中に誰かいたら、敵味方の関係なく、先ずは銃弾を撃ち込む・・・ベトコンが潜伏しているかも知れないからと、ジャングルを丸々ひとつ焼き尽くす・・・。

 イラクもそうですが、ベトナムでも全く同じ。そしてそれを、今度はシリアで繰り返そうしているワケですよね?

 で、アラブ王族連合とイスラエルは、自国の存亡に関わるのでシリアを攻撃したい・・・というのは理解できます。多分トルコも・・・同じような理由からでしょう。

 翻ってアメリカは、例えアラブ王族連合から「軍資金」が提供されるにしても、それで「財政の崖」を先送りにしたところで、オバマ大統領の「ノーベル平和賞」のアレとか、国際的な信用を失うのは確実であり、それを覚悟の上で軍事介入しようというのであれば、「他のモチベーション」・・・アラブ王族連合やイスラエルのような、


お金には代えられない事情


・・・でもあるのか?・・・と。

 そんな時に、先の、ローマ法王の「祈りの日」発言や、アメリカのカソリック団体が、軍事侵攻に反対する書簡をオバマ大統領に送ったという記事に触れ、アメリカには「キリスト教原理主義者」が多いということを思い出しました。


【VOR】在米カトリック教会主教らがシリア軍事侵攻反対
5.09.2013, 12:03

 在米ローマカトリック教会の主教らは米大統領府に対し、シリアへの軍事介入によって引き起こされるネガティブな結果を予測していないとして、軍事作戦に異議を唱えた。

 AFP通信によれば、米国におけるローマ・カトリック教会をつかさどる合議機関であるカトリックの主教会議は、オバマ大統領に宛てた書簡を送った。書面では大統領に対し、軍事作戦を行う代わりに、他国と協力してシリア内戦を停止させるよう呼びかけがなされている。

 声明には、ローマ教皇フランシスコと中東諸国のキリスト教主教らはシリアにおける化学兵器の使用を糾弾しているものの、国際社会に対し紛争の武力解決は控えるよう呼びかけていると強調されている。

リアノーボスチ通信



「松嶋×町山 未公開映画祭」公式サイト
海外ドキュメンタリー映画「ジーザス・キャンプ」~アメリカを動かすキリスト教原理主義~




キリスト教福音宣教会のフィッシャー女史が主催する、子供のサマーキャンプを追う。全米・全世界の福音宣教会信者の家庭から子供たちが参加するキャンプでは、子供たちに原罪を懺悔させ、中絶反対を説き、キリスト教を推進するブッシュを奉っていた。


 で、このDVDについて詳しく解説しているブログがあったのでご紹介します。


Kousyoublog
ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~



第一章 原理主義の登場

・・・19世紀末、ドイツの神学校を中心として「高等批評」と呼ばれる聖書分析の手法が広がっていった。これは聖書を絶対的なものとせず、近代科学的な文献学の手法で客観的に分析しようとするもので、聖書を科学的に分析し理解を深めることで、より信仰を強くしようという試みであった。・・・

・・・だがプロテスタンティズムはそもそも聖書の絶対性・無謬性を前提としていたため、このような高等批評という近代主義に対して多くのプロテスタントの反発が起きた。・・・

・・・20世紀初頭、反近代主義のプロテスタントたちはジョン・グレシャム・メイチェンらを指導者として、1)聖書の無謬性、2)キリストの処女降誕、3)十字架におけるキリストの贖罪、4)キリストの肉体的復活、5)奇跡の客観的事実性、などをうたった「諸原理(ファンダメンタルズ)」という小冊子を発行。原理主義が登場する。・・・

・・・原理主義者の先鋭化は、第一次世界大戦を契機とする。人類初の世界大戦となった第一次世界大戦で彼らが目にした惨状はまさに黙示録の世界であり、聖書において世界の終末に登場する千年王国の到来を予感させた。・・・

・・・「これらはすべて近代の産物である。社会的混乱の原因はすべて近代にある」と原理主義者は考えるようになった。・・・

・・・1925年、進化論教育の是非を巡ってテネシー州の片田舎の町デイトンで行われたスコープス裁判――通称・進化論裁判(モンキートライアル)――が状況を一変させる。・・・

・・・その裁判の過程で原理主義勢力の矛盾や偏狭さがメディアで報じられ、世論が原理主義に否定的になっていく。・・・

・・・かくして、原理主義者は米国社会においては異端者、変わり者のレッテルを張られ極々小数の人々たちだけが閉鎖的集団を作って孤立の道を選ぶことになる。・・・



第二章 福音派の登場~プロテスタント大分裂

・・・原理主義勢力の退潮後、近代主義者を中心とした「主流派」がプロテスタント勢力の中心となるが、進歩主義に傾いた主流派の教えを受け入れられず、しかし、原理主義ほど過激ではないという穏健な保守派の人々は多く存在していた。・・・

・・・主流派プロテスタントによる「キリスト教会連合協議会(FCC)」(50年に「全米キリスト教会協議会(NCC)」に改組)に対して40年代に分離したNAEとACCC及び南北戦争以降信徒を増やし続けていた「南部バプテスト連盟」の諸勢力が狭義の「福音派」となる。・・・



第三章 ペンテコステ派とは何か

・・・この作品で福音派としてそのキャンプの様子が取り上げられているのが「ペンテコステ派」だ。・・・

・・・原理主義的な教義だが聖霊体験を重視し、トランス状態に陥るその信仰スタイルの異質さゆえほかの福音派と一線を画しており、主流派だけでなく、福音派からも「ホーリー・ローラー」と呼ばれて若干侮蔑的に見られているという。・・・



第四章 宗教右派の誕生

・・・千年王国が訪れるのはキリストの復活の前か後かについて、「主流派」は千年王国の樹立の後にキリストが降臨すると考える(後千年王国説)・・・

・・・逆に「福音派」は千年王国の樹立の前にキリストの再臨があると考える(前千年王国説)・・・

・・・共和党の政治家でニューライトと呼ばれる保守運動の中心人物の一人ポール・ワイリックは、このような増大の一途を辿る政治参加に消極的な福音派の人々を保守主義運動に動員することができないかと思った・・・

・・・1979年、ワイリックは当時人気だったテレビ伝道師のジェリー・フォルウェル――作中でも後半妊娠中絶反対の演説音声が紹介されている――にコンタクトを取り、投票について統一した行動を取っていない福音派に属する人々をひとつにまとめる組織を作る提案を行った・・

・・・さらに同時期、ジェームズ・ドブソンの「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」など政治に積極的に福音派の思想を反映させようと考える団体が設立され、また南部バプテスト連盟もフォルウェルの盟友ベイリー・スミスが会長に就任、これらが連携して「宗教右派」を形成した・・・

・・・突如台頭した大勢力宗教右派の後押しでロナルド・レーガンが大統領に就任、レーガンは支持母体となった宗教右派の期待に答えるように、まず諮問機関として保守派や宗教右派の有力者なども参加する国家政策評議会を設置、妊娠中絶や公立学校への祈りなどを政策課題とし、また原理主義的反共姿勢を明確にしていった・・・

・・・行き過ぎた原理主義的傾向が人々から忌避され、またペンテコステ派など多くの福音派勢力が排除されていたこともあって会員数が伸び悩み、組織力が急速に低下・・・



第五章 組織作りの天才ラルフ・リード登場

・・・モラル・マジョリティの失敗を冷静に分析していた若者がいた。後に"神の右手"と恐れられることになる青年ラルフ・リードだ・・・

・・・そのリードの分析を元に設立されたのが新たな宗教右派組織「クリスチャン・コアリション」である・・・

・・・まず草の根レベルで宗教右派の市民組織を各地に設立、それらを育成すべくリーダーシップ・スクールを開催して機能的な組織を構築し、そこで学んだ人々を次々と地方の議会や各種委員会に輩出した。さらに、排他性を排して、福音派だけでなくモルモン教徒やカトリックなど様々な宗派の人々が幅広く参加できる組織にし、さらに「家族の価値」を中心に置きつつも、「小さな政府」「均衡財政」といった世俗的保守主義の主張も盛り込むことで運動の幅を広げていく戦略が取られた・・・


“連合は「燎原の火が広がるような」という形容がぴったりする勢いで、草の根ネットワークを広げ、創設翌年の1990年には125支部で会員5万7000人だった組織は、1996年の絶頂期には、全米50州すべてに合計1700の支部を抱え、170万人の会員を持つまでに巨大化したのである。リーダーシップ・スクールも各地で開催されて、合計7500人の活動家が効果的なロビー活動の方法などの訓練を受けた。訓練を受けた人は、自分で地方選挙に立候補したり、投票ガイドを武器にして選挙キャンペーンを武器にして選挙キャンペーンを組織したりして、共和党の選挙運動の強靭な足腰となっていったのだ。”


・・・ステルス戦略と並んで選挙時に活用されたのが「選挙ガイド」と呼ばれるパンフレットで、特定の候補を支援することは宗教団体では行う事ができないが、「選挙ガイド」は該当する選挙区の候補たちが宗教右派の主張である「人工妊娠中絶」「学校での祈り」「福祉改革」などに賛成か反対かを示す表になっている・・・


“キリスト教連合の圧倒的なパワーを目にした共和党候補には、政治的立場を変えて中絶反対派に回った人も少なくない。この"神の軍団"が、投票日直前に全国6万ヶ所の教会周辺で配った投票ガイドは、合計3300万枚にのぼったという。下院選挙では全国435の選挙区のうち350選挙区でこの紙爆弾がばら撒かれた。福音派の教会では、牧師が説教で、家族の価値の復活を訴え、中絶がいかに罪なことかを説明した。候補名は挙げなくても、牧師が何を求めているかを信徒は理解した”


・・・クリスチャン・コアリションはビル・クリントン大統領と対立姿勢を強める共和党の足腰として機能し共和党に深く食い込んでいく。かくして、90年代、米国の民主主義は機能不全に陥っていった・・・

・・・ニュート・ギングリッジ率いる共和党対民主党クリントン政権の泥沼の政争と、社会を分断する神の軍団が繰り広げる文化戦争に人々はうんざりしており、特にギングリッジの支持が急落していた・・・

・・・二度目の宗教右派運動は米国に文化戦争という巨大な対立の楔を打ち込み、終結した・・・



第六章 ブッシュ政権が作った宗教右派の王国

・・・苛烈を極めた90年代の宗教右派運動と共和党対民主党の政争は世論を穏健中道路線へとシフトさせ、2000年の大統領選は目立った争点が無いまま歴史上まれに見る接戦の後、ジョージ・W・ブッシュ政権を誕生させた・・・

・・・大統領上級顧問カール・ローブは苦戦の理由を分析した結果、1900万人の白人福音派有権者のうち400万人が投票に行かなかったことを発見・・・

・・・ブッシュ政権はラルフ・リードを選挙対策の特別顧問に招聘。再び活躍の場を与えられたリードはより洗練された宗教右派ネットワークの構築にその手腕を発揮する・・・

・・・そして9・11の悲劇によって穏健な中道路線だった世論は一気に保守化へと傾き、それにともなってリードらが再生した教会のネットワークと、分裂気味だった宗教右派の諸勢力がフォーカス・オン・ザ・ファミリーを核として再び活性化し始め、彼らは一気にブッシュ支持へと傾いていった・・・

・・・頓挫したはずの宗教右派運動は90年代よりも遥かに先鋭化したかたちで最盛期を迎えたのだった・・・



第七章 宗教右派の主要トピック

1)最高裁判事指名問題

2)人工妊娠中絶問題

3)進化論と教育問題



第八章 再び衰退する宗教右派

・・・現実の米国では宗教右派はブッシュ政権の退陣とともにほぼ衰退していると考えられている・・・

1)政治への失望

2)宗教右派指導者のスキャンダル

3)宗教右派指導者の高齢化と死亡

・・・福音派信徒の間でも特に若者を中心に宗教右派離れが顕著であり、福音派左派や穏健派が宗教右派に変わって大勢を占めつつあるようだ・・・



第九章 ポピュリズムとしての宗教右派

・・・米国はそのような大衆迎合運動をキリスト教プロテスタントのネットワークを生かすことで極端に活性化させることに成功したといえる・・・

・・・その信仰する先にある神が気づかぬうちに得体の知れぬ何かへとすり替わってしまったのだ・・・

・・・この人々の純粋な祈りの先にあるものがキメラ的にすり替わることと、それでも祈らずにいられないという現象は米国だけの問題ではない・・・


 記事の情報はテンコ盛りなのですが、ワタシが個人的に気になった部分だけを引用させていただきました。・・・orz

 要は、その勢力は衰退したとは言っても、依然、潜在的ポテンシャルを潜めているキリスト教原理主義者(広義のプロテスタント)にとっては、イスラエル(神が支配する国)を支援をすることは、


お金の問題じゃない!


・・・とも考えられるワケです。

 「Kousyoublog」さんの記事に書かれているように、そうした「キリスト教右派」が、選挙時における巨大な「票田」であることを鑑みれば、アメリカ政府・・・現オバマ政権のシリアに対しての強硬な態度も、そうした事情に考慮している可能性も考えられます。

 しかし、だとしても・・・それはアメリカの事情であり、「ベトナム、イラクでの愚行」の繰り返しを、世界はこのまま見過ごすワケにはいかないのですよ。


シリアに平和を!アラブに平和を!





人間ナメんなよ!


でわっ!