2013年4月19日金曜日

報道汚染

  
 マスメディアによる情報操作の見本を示します。


1.TPP調整 経済再生相がインドネシアへ
日テレ

 TPP(=環太平洋経済連携協定)の交渉参加をめぐる調整が大詰めを迎えている。甘利経済再生相は18日、まだ日本の参加を認めていない参加国から承認を取りつけるため、急きょインドネシアに出発することを明らかにした。

 TPPの交渉に参加するためには参加11か国の承認が必要だが、カナダやオーストラリアなど4か国からはまだ正式に承認が得られていない。インドネシアでは今週末に交渉参加国の関係閣僚会合が開かれることから、甘利経済再生相はそれに先立ち現地で個別に閣僚らと会談して、日本の交渉参加の支持を取りつけたい考え。

 甘利経済再生相は会見で、「一刻も早く参加することがTPP全体の利益につながることの理解を求めていきたい」と述べている。

[ 4/18 16:20 NEWS24]


2.甘利担当相、TPP交渉参加へ最終調整、インドネシア訪問へ
サンケイビズ 2013.4.18 12:22

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉を担当する甘利明経済再生相は18日、経済財政諮問会議後の会見で、インドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合(20~21日)に合わせて同国を訪問し、参加各国と詰めの交渉に臨む考えを示した。国会の承認が得られれば、18日夜にも出発する考えだ。

 APEC会合には茂木敏充経済産業相も出席する見通し。甘利TPP担当相は「米国、カナダ、ニュージーランドなどとのバイ(2カ国間)会談を調整している」と語った。

 現地では、TPP交渉に参加する11カ国の閣僚会合が開かれる予定。日本はこの会合には参加できないが、関係各国との意見交換を進めたいとしている。


3.インドネシア、TPP参加は未定=ギタ貿易相

 31日付のインドネシア・ファイナンス・トゥデー紙(29面)によると、ギタ貿易相は30日、インドネシアが環太平洋連携協定(TPP)に参加するかどうかは今のところ未定であることを明らかにした。

 同相は「われわれはTPPがどのような利益をもたらすか把握しておらず、まだ多くの検討が必要だ」と説明。既に一部の業界団体からはTPP参加を支持する意見もあるが、今後も非政府組織や利害関係者などから意見を聴く必要があると述べた。

 TPP参加をめぐっては国内で賛否両論となっており、繊維協会(API)のアデ・スドラジャット会長はTPPが米国向けの繊維輸出拡大につながるとして支持を表明。これに対し、経営者協会(Apindo)のソフヤン・ワナンディ会長は、TPPは協力スキームが不明瞭だとして参加を見送るべきと主張している。(時事)

[時事通信社]


 1.のニュースは、酷い誤解を生む書き方を意図的にしています。2.のニュースで明らかなように、インドネシアで開かれるのは「APEC貿易相会議」であるのですが、「日テレ」のニュースではその件には触れずに、まるで「TPP交渉参加国の関係閣僚会合」が開かれるかのような書き方をしています。

 確かに「TPP交渉参加国の関係閣僚会合」は開かれるのですが、あくまでも「APEC貿易相会議」のオマケとして開かれるものであり、「日テレ」のニュースはその経緯を隠していると言えます。

 その結果として、「TPP交渉参加国の関係閣僚会合」がインドネシアで開かれるということは、インドネシアもTPP加盟に前向きであるかのような印象を読者に与えるような効果をもたらします。

 しかし、インドネシアが当面・・・というか、今後もTPPに加盟する可能性は低いと言えます。まず第一に、ギタ貿易相が述べているように、その内容をいまだに把握できていないという現状にあります。秘密事項が多く、一国の進退を左右しかねない貿易協定であるにもかかわらず、密室状態で協議が進められるような協定に警戒心を抱くのは当然です。

 そして次に、インドネシアはイスラム経済圏の国であり、イスラム教が国教であるインドネシアにとっては、経済だけではない、国家のアイデンティティーの問題として、西側(キリスト教圏)の多国籍企業に利する面の多いTPPなど、加盟すること自体が「コーラン」の教えに背く可能性があるということです。

 「経済」と「宗教」を秤にかければ、インドネシアは迷うことなく「宗教」を選択するでしょう。ナンダカンダ言ってもイスラム教徒の数が世界一多いのはインドネシアであり、「イスラム教」がインドネシアをひとつにまとめあげているワケですから。

 さらに付け加えるならば、インドネシアはアジアの経済大国のひとつであり、インドネシア、タイなどが加わらないTPPで「アジアの成長を取り込む」・・・って、イッタイ何のことを言っているのか理解に苦しみます。ま、もっともタイはインド洋側なので、そもそも環太平洋には含まれませんが・・・。

 「アジアの成長を取り込む」・・・のであれば、ポイントを絞って「ASEAN」であり、「APEC」でしょうよ?違います? 
 
 つまりは、「アジアの成長を取り込む」・・・なんてのは、表向きの看板でしかないことは誰の目にも明らかであり、「TPPの真の目的」は、通貨圏の統合にあると見ることができます。

 カナダ、メキシコが、交渉権も与えられないままにTPP加盟に前向きなのが不自然に感じられるワケですが、「何のメリットがあって?」・・・と考えたとき、思い出したのが北米統一通貨=AMERO構想です。カナダ、アメリカ、メキシコの三国で通過を統合しようというアレです。


北米通貨連合 - Wikipedia


 一時期多くのメディアに取り上げられ、その実現まで秒読みの観もあったのですが、いつの間にか話はウヤムヤになり、計画は頓挫したのか?と思っていたのですが、どっこい、ゾンビのように、しぶとく生きていたということなんでしょう。
 
 で、なぜ?いまごろ「AMERO」?・・・という話になるワケですが、アメリカの財政がドルだけ(QE3)では建て直しが効かない状況になったから・・・と、見ることもできます。


通貨戦争としての金の暴落
2013年4月16日  田中 宇

<抜粋>
 金地金は、ドルと対極の関係にある。ドルが隆々とすれば金がすたれ、ドルが弱体化すると金が輝くのが自然な関係だ。今回、金相場が暴落したが、それはドルが隆々としたからでない。ドルは依然として弱く、むしろ金融崩壊を防ぐために、ドルの発行者である連銀が無理に続けねばならない量的緩和によって、ドルの弱体化が進んでいる。今回の金暴落は、ドルの弱まりを顕在化することを防ぐためのものだ。ドルが再生するのは難しい。連銀と日銀以外の世界の中央銀行の多くが、自国の通貨の今後の後ろ盾(外貨備蓄)を、失墜しつつあるドルや米国債から金地金に替えるべく、金地金を買い増している。金融のプロである中央銀行自身が、ドルへの見放しを意味する金の買い増しをやっている。
</抜粋>


 金価格の暴落は、ドルを守るために仕組まれた・・・という説も説得力を帯びてきますが、「通貨戦争」の勝者とは、


貿易決済通貨


を制した者・・・という見方もあります。TPPの話に戻ると、TPP圏内での決済通貨が何になるのか?・・・という点も、各々の条項の問題点と比較しても、十分に重要な問題になると思えるワケです。

 そのスキームがどのようなものになるのか?ワタシには明確に断言できませんが、よしんば「AMERO」が成立したとすると、決済通貨が「AMERO」になる可能性は十分に考えられるワケで、そしてそうなった場合、どのような事態が想定されるのか?

 ま、後はワタシなんかより遥かに頭がイイ人たちがゴロゴロいるでしょうから、彼らの聡明な頭脳に委ねることにします。ただ言える事は、今回のような明らかな情報操作が行われるような場合は、「裏」に何かが隠されている場合が多く、そもそも、その「裏」を暴くのが報道人としての矜持なんじゃないの?・・・と。




人間ナメんなよ!


でわっ!