2013年1月25日金曜日

サウジアラビアが抱える問題


 アルジェリアでの痛ましい事件の報道から、「サラフィー」という言葉をよく耳にしますが、「サラフィー」とは、「サラフ」=「先祖」を敬う人たち・・・の意味で、ほぼ「イスラム原理主義」と同義と捉えられるでしょう。 
 
 JETRO(日本貿易振興機構)の資料によれば、「サラフィー」の萌芽はサウジアラビアのイスラム教=ワッハーブ派の中にみられますが、サウジアラビアでは「政教分離」が行われていることが、その原因と推測されます。

 アラブ独立以前はアラビア半島の一地方部族であったサウード家が、やはり、一イスラム教宗派であったワッハーブ派と協力関係を築き、イロイロあってその後勢力を伸ばし、今日のサウジアラビア建国に到ったワケですが、協力関係の条件・・・「ワッハーブ派は、政治には口を出さない」・・・は、今日も継続されています。

 オスマントルコの支配下では異文化(欧米)と直接対峙することもなかった人々が、アラブの独立を契機にそうした異文化に直面するようになると、異文化に対する警戒心から、「サラフ」=「先祖」を敬おう・・・という気運が生まれるのは、自然の流れと言えるでしょう。

 当初は単なる精神的運動であった「サラフ主義」でしたが、1990年の「湾岸戦争の勃発時にアメリカ軍がサウジアラビアに駐屯したことにより、聖地メッカが冒涜されるのではないかという危機感から、政治的活動への流れが強まり表面化するワケですが、ワッハーブ派(本家)は政治不介入を貫いており、「サラフ主義者」の国内での政治活動は不可能。そこで、多くの「サラフ主義者」は国外に散っていきます。

 そうした「サラフ主義者」=「サラフィー」のひとりがビン・ラディンであり、アフガニスタンパキスタンが彼の拠点(アル・カイーダ)になったワケです。そして、サウジアラビア国内の「サラフ主義者」から潤沢な資金援助を受け、亡命「サラフ主義者」たちは活動を活発化させていきます。

 以上が、「JETRO」の資料から読み取れる「サラフ主義」=「サラフィー」の概要ですが、サウード家とワッハーブ派の盟約=「お互いの領分には不介入」・・・という状態が、ある意味「サラフ主義者」の活動を増長させていると言えます。

 サウード家としても何とかしたいところでしょうが、聖地メッカを抱え、イスラム世界の盟主的な立場にある以上、先祖・・・すなわちマホメットを敬うことを掲げる「サラフィー」を迂闊に弾圧すれば、サウド家自体の権威の失墜に繋がりかねません。したがって、国内の「サラフ主義者」が海外の仲間を援助していても、見て見ぬ振りをするしかないのでしょう。

 それとこの資料によれば、サウジアラビア国内の「サラフ主義者」の割合に、スンニ派教徒が増えているとのこと。であれば、スンニ派と「サラフ主義」はほぼ同質の存在とも考えられ、「サラフ主義」の敬う「先祖」とは、「スンニ派の先祖」ということになるんですかね?

 以上がJETROの資料からのまとめですが、これが全てであれば、「ビン・ラディン」はCIAの援助を受けていたと言う情報とはかみ合わないような気もするワケですが、考えてみれば、当時の「共通の敵」はソ連であり、それ故、CIAがビン・ラディンらに軍事訓練を施し、アル・カイーダ、タリバン側もそれを望んだと考えられます。

 ソ連のアフガニスタン侵攻 (1978年-1989年)があって後、イスラム武力勢力が世界的にクローズアップされるようになりましたが、ソ連が瓦解(1991年)した後、9.11(2001年)の事件を境にテロリスト=イスラム過激派が決定付けられたワケです。

 では、国外に亡命した「サラフ主義者」の本心はどこにあるのか?・・・と、考えるに、最終的にはサウジアラビアにおける「政教一致」にあるのではないか?・・・と。

 当然、サウード家の権威は下がり、サウード家に取り入っている欧米もその利権を減らすことになるでしょうから、「サラフ主義者」は両者にとって邪魔な存在になるワケですが、ワッハーブ派の傘の下にいる限り、過去の盟約によってサウード家には手出しができず、したがってサウード家が石油利権を独占している限り、その潤沢なオイルマネーは、結果的に「サラフ主義者」に流れていくという構図になります。

 同じような問題はサウジアラビア一国だけでなく、一部の王族が利権を独占しているその他のアラブ諸国に関しても言えるですし、そうした王族と組んでいるのが、欧米(日本も含む)のグローバル企業なワケですよ。

 同時に、アラブの石油によって文化的生活を営んでいるワタシたちにしても、「他人事」として済ましてしまうワケにはいきません。実際、アルジェリアでは邦人の被害者が出ているワケですから。

 で、どうすればいいかなんて、簡単には答えは見つからないでしょうし、日本人には答えが出せない問題かも知れません。それでも、問題から目を逸らしていたら、何の解決策も浮かばない事だけは確かです。これからのアラブ世界の在り方を決めるのはアラブの人たち自身ですし、日本人としては、協力できる部分に関しては協力していく・・・というスタンスでいくしかないのでしょう。 

 最後に、フランスのマリ侵攻について、「地下資源目当て」・・・という論調が多く見られますが、ワタシも同意見です。しかし何故?そこまで地下資源に固執するのかを考えると、ヨーロッパの金融危機がその要因として浮かび上がります。「世界中が資源獲得に血道を上げている」・・という論の裏を返せば、「お金がアテにならなくなっている」・・・ということの証でもあります。

 すなわちこれからの世界は、「現物を持っている者が一番強い」・・・ということになり、銀行口座に積み上げられた数字など、何の価値もなくなる。・・・かも知れないということです。

 で、ドイツがアメリカに預けてある金塊を引き上げようとしているのも、そうした「現物回帰」の流れの中にあるのかな?・・・と。


ドイツが米国に預けている“金塊”(約1700トン)を回収へ:実存するかどうかも話題に:対米自立への道?日本は?


 金本位制云々など、金をめぐる話題も少し盛り上がっているようだ。

 そのようななか、日本では報じられていないようだが、ドイツ政府とドイツ連銀が、米国NY連銀に預けている金塊(約1700トンと推測)を回収するという報道がなされた。

 ご存じのように、日本の金備蓄(約850トン)も、実物は米国NY連銀の金庫にあるとされる。

 金に限らず、外貨準備の中核をなしている米国債も、NY連銀の“帳簿”にのみ存在し、支払われる利息も、その“帳簿”に記載されるだけという仕組みである。

 それゆえ、米国連邦政府やFRBは、対日債務がどれほど積み上がろうともたいしたことだとは感じていない。

 被援助国の発展途上国もそうだが、日本やドイツといった敗戦国は、自国の公的保有金や対外公的債権が米国を中心とした連合国の“人質”に取られてきたと言えるだろう。


※ FRBが保管する米国の公的金自体が、“曖昧な存在”になっているともいう。

 9千トン近いといわれる米国の公的保有金の“監査”を求める動きが何度かあったが、その都度、費用がかかり過ぎるという理由で却下されてきたといわれる。


 10月26日早朝にNHKBS1で放送された「ドイツZDFニュース」は、ドイツが保有する金3,936トンについて指摘されている問題や米国に預けているとされる部分について回収する意向であることを報じた。


報道された内容の要点:

● ドイツの公的保有金は、1/3(1,300トン)がフランクフルトのドイツ連銀金庫に保管され、残り2/3がニューヨーク・パリ・ロンドンに預けられている。

● 米国NY連銀に預けている金をドイツに移す意向

● これまで一度も、外国にある金が本物かどうか?重量もきちんとあるのか?が確認されていない。

● 与党であるキリスト教民主同盟国会議員団の外交担当責任者(スプレヒャー氏)
も、「ドイツ連銀が、これほど長い間、これほど杜撰に、ドイツの財産を取り扱っているのはなぜなのか説明できない。簡単に、ニューヨークとパリ・ロンドンに置きっぱなしにしているのは解せない」と問題している。

● ドイツの金取引業者の専門家も、「ドイツ連銀の金の備蓄は、数十年もチェックされていません。そのため、国民のあいだに、金の備蓄が実際にあるのかどうかよいう疑問を生じさせている」

● ドイツの会計検査院は、そのような輿論動向を受けて、27万3千本の金の延べ棒すべてを正確に数え点検するよう求めた。

● 外国に金を預けている理由として“東西冷戦”で起きるかもしれない不測の事態を考慮して、東ドイツとの国境線からできるだけ遠ざけたかったという説明がなされている。

● ドイツ納税者団体の会長は、「国外の備蓄場所をなくし、1ヶ所にまとめて備蓄することも考えるべきだ。東西冷戦はもうない」と語った。

● ドイツ連銀は、預けている各国の中央銀行に最高度の信頼を置いていると語り、数年前に、ロンドンに備蓄している金を検査したときは1gの不足もなかったと説明しているという。


 つまり、金融資本(信用創造)による世界支配=グローバリズムに、綻び(信用破綻)が生じ始めているのかも知れませんし、そうなると、金融を支配してきた勢力の生き残りを賭けて、更なる混乱(ショックドクトリン)が用意されているかも知れませんなw。

 剣呑剣呑。




人間ナメんなよ!


でわっ!