2012年11月9日金曜日

発送電分離のヴィジョン


 原子力発電はオワコン・・・というか、最早、「廃炉」に向けた流れに入りつつあるのが目に見えているワケですが、そうなると、嫌でも「次のヴィジョン」を持つ必要があるワケです。

 そこで今回の原発事故で明らかになった諸問題を整理してみるに、大きく、「原発の危険性(含む核廃棄物)」と、「電力市場の独占体制」が挙げられます。

 そうした事実を踏まえて役人も、ようやく次の時代のエネルギー(電力)の供給について真剣に?考え始めたようなのですが・・・。


発送電分離、2方式で意見割れる 経産省専門委
日本経済新聞 2012/11/7 20:29

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 経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)は7日、電力改革の議論を4カ月ぶりに再開した。年末の取りまとめに向け、電力会社の発電と送配電の事業を分ける「発送電分離」の議論が本格化した。

 専門委は再開してすぐに2つの分離方法で、委員の意見が割れた。1つは電力会社の送配電部門をグループ内で分社化する「法的分離」だ。安念潤司氏は「(分社化など)法律の面でわかりやすく、制度設計もしやすい」と利点を指摘した。

 もう1つの方法の「機能分離」を推す声も出た。電力各社の送配電網の運用を独立した外部の機関に任せる手法で、「(電力会社の供給区域をまたぐ)広域の電力融通に適している」(松村敏弘氏)。

 発送電分離後も規制が必要との意見も相次いだ。大田弘子氏は「(電力会社の部門間で)情報や人事、予算を遮断し、取引を外部チェックできるようにすべきだ」と強調した。例えば、機能分離で送配電網を外部機関に切り離しても、電力会社関係者が外部機関の意思決定を左右すれば、公平性が骨抜きにされかねないからだ。

 発送電分離は東京電力の取り組みが試金石になりそうだ。東電は政府の改革案に沿って、来年2月に燃料・火力部門を、同4月に送配電と小売部門をそれぞれ社内分社化する方針だ。

 ただ電力会社の改革への姿勢は慎重になりつつある。関西電力の岩根茂樹副社長は専門委で「発電、送電、小売りをわけるリスクは大きい」と述べた。専門委が7月に改革の基本方針をまとめた時は、電気事業連合会が発送電分離を容認した。しかし、原子力発電所の再稼働の遅れなど「従来と状況が変わった」(岩根氏)。電力会社の慎重姿勢が今後の議論に影響を及ぼす可能性がある。

 専門委は基本方針で、発送電分離や小売りの全面自由化の方針を盛り込んだ。年内に詳細を詰め、来年の通常国会に電気事業法の改正案を出す方向で検討している。

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 ワタシとしては、発送電の分離を議論する前に、まず、エネルギー(電力)の在り方を策定する必要があるんじゃないの?とも思うワケです。廃原発後の電力の供給方法よって、送電の形態も様変わりするワケでしょ?

 発電側が分散(小規模地域発電など)されると、それに対応した送配電のインフラも必要とされるワケで、さらには自家発電余剰電力の買取が今後も継続されるとなれば、送配電線に掛かる負荷も増加するワケです。

 具体的に考えると、まず、「エコ・エネルギー」と呼ばれる、太陽光、風力、水力、波力、地熱などによる発電方法。そして、「バイオ・エネルギー」と呼ばれる、藻、鶏糞などを利用した発電方法。さらには従来の火力発電などの技術改善による発電の高効率化が挙げられるワケですが、そうした様々な発電施設が供給する電力を統合し、送配電するインフラの整備が求められるワケです。



 現在の日本の電力会社送配電網の概略は上図のようになるワケですが、これの再構築を、これからみんなで考えましょうというワケです。で、このニュースが目に入ったワケですが・・・。


東京都 中部電に供給再要請 複数施設を提案
TOKYO Web 2012年11月9日 朝刊

<転載>

 東京都が中部電力に対し、都の施設へ営業区域を越えて電力を供給するよう要請していることが分かった。都は二月に都庁舎への供給を求めて中部電に断られており、今回は比較的規模の小さな他の施設への供給を再提案。中部電は全国的な電力需給の状況を見極めながら検討する。

 猪瀬直樹副知事が八日、名古屋市の中部電本店を訪ね担当役員と協議。都側は複数の施設をリストで示して電力供給を要請した。猪瀬氏は本紙の取材に「競争こそが安定供給を生む」と述べた。都が中部電の供給を受けることで、東京電力のコスト削減努力を促す考えだ。

 猪瀬氏は供給元に中部電を選んだ理由として、発電量に占める原発比率が他の電力会社より低いことなどを挙げた。

 都が二月に都庁舎への電力供給を要請した際、中部電は「西日本地域への応援融通を優先する」として断った。一方、将来的に電力需給が安定すれば都へ供給できることを両者で確認していた。

 ただ、中部電は全面停止している浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働のめどが立たず、火力発電の燃料費増で業績が悪化している。今冬も原発停止で供給力が低下している九州電力から応援融通を求められており、都へ供給できるかどうか慎重に検討する。

</転載>


 中部電力から東京都の施設に、ピンポイントで直接電気の供給を受けるのは、既存の送配電線の都合からも不可能なワケですよね?したがって、中部電力が供給する電気を東京電力の送配電線に相乗りさせ、最終的な電力消費量の分の電気代を中部電力に支払う形になると思われます。

 そしてその電気代には、中部電力が東京電力に支払う送配電線の使用料も含まれるハズなので、電気料金+送配電線使用料金が東京電力の電気料金よりも安ければ、コストカットのメリットがあるワケです。・・・が、それよりも先に、


そんな事ができるのか?


という、実証試験の意味合いもあるように思えるワケです。

 日常的に電力会社間での「電力融通」は行われていますが、もっと小さなユニット=各家庭に、地域を越えた電力会社からの送電が成り立つかどうかの検証は、これから先の「電力グリッド化」に向けたデータの蓄積にもなるワケです。

 前にも言ったように、これからのエネルギー政策・・・特に電力に関しては、発電側よりも、送配電側の技術革新に比重が置かれると考えられます。先進国のインフラにしてもそうですが、日本にしても、資源には恵まれなくても自然災害には恵まれている国柄を考えれば、送配電網の管理と維持は発電以上に重要な課題と言えるでしょう。


茨城県で震度4の地震
NHKニュース 11月9日 13時13分

<転載>

9日午後0時52分ごろ、茨城県で震度4の揺れを観測する地震がありました。

この地震による津波の心配はありません。

▽震度4を観測したのは、茨城県日立市と常陸太田市、高萩市、それに、北茨城市で、▽震度3が、福島県いわき市や水戸市、茨城県下妻市、ひたちなか市、栃木県大田原市、埼玉県加須市などでした。

このほか震度2や1の揺れを東北と関東甲信越の広い範囲で観測しました。

気象庁の観測によりますと、震源地は福島県沖で、震源の深さは20キロ、地震の規模を示すマグニチュードは5.5と推定されています。

</転載>


 何で?「福島」で発生した地震を、「茨城」にすり替えて報道するのか、NHKの報道姿勢が問われるニュースですが、それはアレとして、直近の出来事で言えば、「サンディ」の直撃?を受けたニューヨークの送配電インフラがズタズタにされ、各地では今だに停電が続いている状況です。


「サンディ」被害で米東部90万世帯に停電続く 低気圧も接近
CNN 2012.11.07 Wed posted at 12:49 JST

<転載>

ニューヨーク(CNN) 大型温帯低気圧「サンディ」の直撃から8日目を迎えた6日、米ニューヨーク州やニュージャージー州の被災地ではまだ90万世帯以上で停電が続き、低気圧の接近で事態の悪化も予想されている。一方、両州知事は、マンハッタンとニュージャージー州を結ぶホランドトンネルが現地時間の7日午前5時に全面開通すると発表した。

ニューヨーク州は6日夜の時点で35万世帯が停電し、ニューヨーク市などの2万世帯については復旧までさらに時間がかかる見通し。ニュージャージー州も56万6000世帯が停電しているが、同州最大の電力会社は6日までに87%の電力が復旧したと発表、7日午前までに90%の復旧を目指すとした。

ニューヨーク市南部のスタテン島では13万9000世帯以上が被災し、東部のクイーンズ地区でも住宅や樹木が倒壊するなど大きな被害が出ている。同日までに確認された米東部の死者は110人に上った。

7日は低気圧の接近で強い雨と高潮、強風が予想され、被災地が再び洪水に見舞われる恐れもある。 ニューヨーク市長は7日午後までに、すべての公園やビーチを閉鎖するよう命じた。都市部は寒波に覆われて6日朝の気温が氷点下に下がっている。

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 ま、アメリカは、過去の大停電の教訓を活かせなかったのでしょう・・・。過去の教訓を活かし送配電網に改善の手立てを打っていれば、今回のような台風に見舞われようとも、被害はもっと限定されていたように思えます。

 で、話は戻りますが、東京都の今回の試みの成果によっては、従来の送配電網の在り方を「ブレーク・スルー」する道筋も見えてくるワケです。



 既存の地域ごとの電力会社の電力供給網(上)の中に、新規の小規模発電業者が参入した場合(下)・・・



 小規模発電業者をA・B・C・Dとすると、既存の電力各社も、いずれはこれらのグループの一員となります。そして、既存の送配電網に電気を乗せるための電力統合(中継)施設と、送配電線を保守・管理する組織に分離されるワケです。

 ドイツの場合は、既存の大手電力会社が送配電網の利権を手放さなかったために、新規の小規模発電会社の撤退を招いたワケですから、日本はその二の舞にならないよう、送配電網は国の管理下に置く方が無難でしょう。

 各電力会社の「送配電部門を公社化」して、業務を継続してもらうのが得策かと・・・。

 一方、電力の統合施設は既存の電力会社に運営を委ね、同時に、小規模発電業者の電気料金徴収の窓口業務を兼任するのもアリかも知れません。

 最後に自家発電と売電ですが、既存の送配電線を流用するのであれば、基本的に売電は考えないほうがイイように思います。自宅の分の使用電気を自家発電によって賄えるなら、


それで好し!


と、割り切ったほうがイイでしょう。余った分の電気を売ろうと考えても、従来型の送配電線である限り、例の「同一バンク問題」が障害になるのが目に見えているからです。

 普段は給電を止めて自家発電だけで電気を賄い、太陽光発電パネルが壊れたとか?の緊急の場合には給電を再開できるような、フレキシブルな送配電の体制が構築できればイイのではないか?・・・と、ワタシ的には思う次第です。はい。 




人間ナメんなよ!
 
 
でわっ!