2013年10月9日水曜日

原子力損害賠償支援機構法 (2)

  
原子力損害賠償支援機構法


第五章 業務


第一節 業務の範囲等

第三十五条 (業務の範囲)
 機構は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。

一 次節の規定による負担金の収納

二 第三節の規定による資金援助その他同節の規定による業務

三 第四節の規定による相談その他同節の規定による業務

四 前三号に掲げる業務に附帯する業務

第三十六条 (業務方法書)
1. 機構は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2. 前項の業務方法書には、負担金に関する事項その他主務省令で定める事項を記載しなければならない。

第三十七条 (報告の徴収等)
1. 機構は、その業務を行うため必要があるときは、原子力事業者に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。
2. 前項の規定により報告又は資料の提出を求められた原子力事業者は、遅滞なく、報告又は資料の提出をしなければならない。



第二節 負担金

第三十八条 (負担金の納付)
1. 原子力事業者(次に掲げる者(これらの者であった者を含む。)であって、原子炉の運転等(賠償法第二条第一項に規定する原子炉の運転等のうち第一号に規定する実用発電用原子炉又は第二号に規定する実用再処理施設に係るものをいう。以下同じ。)をしているものをいう。以下同じ。)は、機構の事業年度ごとに、機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならない。

一 実用発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下この号及び次号において「原子炉等規制法」という。)第四十三条の四第一項に規定する実用発電用原子炉をいう。次号において同じ。)に係る原子炉等規制法第四十三条の三の五第一項の許可を受けた者

二 実用再処理施設(原子炉等規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設のうち実用発電用原子炉において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(原子炉等規制法第二条第十項に規定する再処理をいう。)を行うものとして政令で定めるものをいう。)に係る原子炉等規制法第四十四条第一項の指定を受けた者
2. 前項の負担金は、当該事業年度の終了後三月以内に納付しなければならない。ただし、当該負担金の額の二分の一に相当する金額については、当該事業年度終了の日の翌日以後六月を経過した日から三月以内に納付することができる。
3. 機構は、負担金をその納期限までに納付しない原子力事業者があるときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に報告しなければならない。
4. 主務大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、その旨を公表するものとする。

第三十九条 (負担金の額)
1. 前条第一項の負担金の額は、各原子力事業者につき、一般負担金年度総額(機構の事業年度ごとに原子力事業者から納付を受けるべき負担金の額(第五十二条第一項に規定する特別負担金額を除く。)の総額として機構が運営委員会の議決を経て定める額をいう。以下この条において同じ。)に負担金率(一般負担金年度総額に対する各原子力事業者が納付すべき額の割合として機構が運営委員会の議決を経て各原子力事業者ごとに定める割合をいう。以下この条において同じ。)を乗じて得た額とする。
2. 一般負担金年度総額は、次に掲げる要件を満たすために必要なものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。

一 機構の業務に要する費用の長期的な見通しに照らし、当該業務を適正かつ確実に実施するために十分なものであること。

二 各原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすおそれのないものであること。
3. 負担金率は、各原子力事業者の原子炉の運転等に係る事業の規模、内容その他の事情を勘案して主務省令で定める基準に従って定められなければならない。
4. 機構は、一般負担金年度総額若しくは負担金率を定め、又はこれらを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
5. 主務大臣は、一般負担金年度総額について前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
6. 機構は、第四項の認可を受けたときは、遅滞なく、当該認可に係る一般負担金年度総額又は負担金率を原子力事業者に通知しなければならない。
7. 主務大臣は、機構の業務の実施の状況、各原子力事業者の原子炉の運転等に係る事業の状況その他の事情に照らし必要と認めるときは、機構に対し、一般負担金年度総額又は負担金率の変更をすべきことを命ずることができる。

第四十条 (延滞金)
1. 原子力事業者は、負担金をその納期限までに納付しない場合には、機構に対し、延滞金を納付しなければならない。
2. 延滞金の額は、未納の負担金の額に納期限の翌日からその納付の日までの日数に応じ年十四・五パーセントの割合を乗じて計算した額とする。



第三節 資金援助

第一款 通則

第四十一条 (資金援助の申込み)
1. 原子力事業者は、賠償法第三条の規定により当該原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額(以下この条及び第四十三条第一項において「要賠償額」という。)が賠償措置額を超えると見込まれる場合には、機構が、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に資するため、次に掲げる措置(以下「資金援助」という。)を行うことを、機構に申し込むことができる。

一 当該原子力事業者に対し、要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金を交付すること(以下「資金交付」という。)。

二 当該原子力事業者が発行する株式の引受け

三 当該原子力事業者に対する資金の貸付け

四 当該原子力事業者が発行する社債又は主務省令で定める約束手形の取得

五 当該原子力事業者による資金の借入れに係る債務の保証
2.前項の規定による申込みを行う原子力事業者は、機構に対し、次に掲げる事項を記載した書類を提出しなければならない。

一 原子力損害の状況

二 要賠償額の見通し及び損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策

三 資金援助を必要とする理由並びに実施を希望する資金援助の内容及び額

四 事業及び収支に関する中期的な計画

第四十二条 (資金援助の決定)
1. 機構は、前条第一項の規定による申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該申込みに係る資金援助を行うかどうか並びに当該資金援助を行う場合にあってはその内容及び額を決定しなければならない。
2. 機構は、前項の規定による決定をしたときは、遅滞なく、当該決定に係る事項を当該申込みを行った原子力事業者に通知するとともに、主務大臣に報告しなければならない。
3. 主務大臣は、前項の規定による報告を受けた場合において、当該報告に係る決定を受けた原子力事業者の原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図るため必要があると認めるときは、機構に対し、当該決定の変更を命ずることができる。

第四十三条 (資金援助の内容等の変更)
1. 前条第一項の規定による資金援助を行う旨の決定を受けた原子力事業者は、要賠償額の増加その他の事情により必要が生じた場合には、当該資金援助の内容又は額の変更の申込みをすることができる。
2. 前項の申込みを行う原子力事業者は、機構に対し、第四十一条第二項各号に掲げる事項を記載した書類を提出しなければならない。
3. 機構は、第一項の申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該申込みに係る資金援助の内容又は額の変更を行うかどうかを決定しなければならない。
4. 前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による決定について準用する。

第四十四条 (交付資金の返還)
 機構は、資金交付を受けた原子力事業者の損害賠償の履行の状況に照らし、当該原子力事業者に対する当該資金交付の額から当該履行に充てられた額を控除した額の全部又は一部が、当該履行に充てられる見込みがなくなったと認めるときは、その額を機構に対し納付することを求めなければならない。

第二款 特別事業計画の認定等

第四十五条 (特別事業計画の認定)
1. 機構は、第四十二条第一項の規定による資金援助を行う旨の決定をしようとする場合において、当該資金援助に係る資金交付に要する費用に充てるため第四十八条第二項の規定による国債の交付を受ける必要があり、又はその必要が生ずることが見込まれるときは、運営委員会の議決を経て、当該資金援助の申込みを行った原子力事業者と共同して、当該原子力事業者による損害賠償の実施その他の事業の運営及び当該原子力事業者に対する資金援助に関する計画(以下「特別事業計画」という。)を作成し、主務大臣の認定を受けなければならない。
2. 特別事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 第四十一条第二項第一号、第二号及び第四号に掲げる事項

二 原子力事業者の経営の合理化のための方策

三 前号に掲げるもののほか、原子力損害の賠償の履行に充てるための資金を確保するための原子力事業者による関係者に対する協力の要請その他の方策

四 原子力事業者の資産及び収支の状況に係る評価に関する事項

五 原子力事業者の経営責任の明確化のための方策

六 原子力事業者に対する資金援助の内容及び額

七 交付を希望する国債の額その他資金援助に要する費用の財源に関する事項

八 その他主務省令で定める事項
3. 機構は、特別事業計画を作成しようとするときは、当該原子力事業者の資産に対する厳正かつ客観的な評価及び経営内容の徹底した見直しを行うとともに、当該原子力事業者による関係者に対する協力の要請が適切かつ十分なものであるかどうかを確認しなければならない。
4. 主務大臣は、第一項の認定の申請があった特別事業計画が次に掲げる要件の全てに該当すると認める場合に限り、同項の認定をすることができる。

一 当該原子力事業者による原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図る上で適切なものであること。

二 第二項第二号に掲げる事項が、当該原子力事業者が原子力損害の賠償の履行に充てるための資金を確保するため最大限の努力を尽くすものであること。

三 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
5. 主務大臣は、第一項の認定をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
6. 主務大臣は、第一項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨及び当該認定に係る特別事業計画(以下「認定特別事業計画」という。)を公表するものとする。ただし、当該特別事業計画を提出した原子力事業者の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び当該原子力事業者の業務の遂行に不当な不利益を与えるおそれのある事項については、この限りでない。

第四十六条 (認定特別事業計画の変更)
1. 機構及び原子力事業者は、認定特別事業計画の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、主務大臣の認定を受けなければならない。
2. 機構は、前項の認定の申請をしようとするときは、運営委員会の議決を経なければならない。
3. 主務大臣は、第一項の認定の申請があったときは、次に掲げる要件の全てに該当すると認める場合に限り、同項の認定をするものとする。

一 変更後の特別事業計画が前条第四項各号に掲げる要件を満たしていること。

二 損害賠償の実施の状況その他の事情に照らし、認定特別事業計画の変更をすることについてやむを得ない事情があること。
4. 前条第五項及び第六項の規定は、第一項の認定について準用する。

第四十七条 (認定特別事業計画の履行の確保)
1. 主務大臣は、第四十五条第一項の認定の日から次に掲げる条件の全てが満たされたと認めて主務大臣が告示する日までの間(第三項及び第五十二条第一項において「特別期間」という。)、認定特別事業計画(変更があったときは、その変更後のもの。以下この項において同じ。)の履行の確保のために必要があると認めるときは、第四十五条第一項の認定(前条第一項の認定を含む。第六十九条第二項において同じ。)を受けた原子力事業者(以下「認定事業者」という。)に対し、認定特別事業計画の履行状況につき報告を求め、又は必要な措置を命ずることができる。

一 認定事業者の損害賠償の履行の状況及び認定特別事業計画に基づく資金援助(以下「特別資金援助」という。)の実施の状況に照らし、当該認定事業者に対する特別資金援助に係る資金交付を行うために新たに次条第二項の規定による国債の交付を行う必要が生ずることがないと認められること。

二 次条第二項の規定により機構に交付された国債のうち第四十九条第二項の規定により償還を受けていないものが政府に返還されていること。

三 第五十九条第四項の規定により機構が国庫に納付した額の合計額第四十九条第二項の規定により国債の償還を受けた額の合計額に達していること。
2. 主務大臣は、前項の規定により報告を求めた場合には、当該報告を公表することができる。
3. 認定事業者が、当該認定に係る特別期間中に原子力事業者でなくなった場合には、当該原子力事業者でなくなった認定事業者は、当該特別期間中においては、引き続き原子力事業者であるものとみなして、このの規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。

第三款 特別資金援助に対する政府の援助

第四十八条 (国債の交付)
1. 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる資金の確保に用いるため、国債を発行することができる。
2. 政府は、前項の規定により、予算で定める額の範囲内において、国債を発行し、これを機構に交付するものとする。
3. 第一項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4. 第一項の規定により発行する国債については、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5. 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、財務省令で定める。

第四十九条 (国債の償還等)
1. 機構は、特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる額を限り、前条第二項の規定により交付された国債の償還の請求をすることができる。
2. 政府は、前条第二項の規定により交付した国債の全部又は一部につき機構から償還の請求を受けたときは、速やかに、その償還をしなければならない。
3. 前項の規定による償還は、この法律の規定により行う原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を確保するための財政上の措置に関する措置の経理を明確にすることを目的としてエネルギー対策特別会計に設けられる勘定の負担において行うものとする。
4. 前項に規定する勘定の負担は、特別の資金の設置及び当該資金の適切な受払いその他の当該勘定における資金の確保に必要な措置により円滑に行われなければならない。
5. 前各項に定めるもののほか、前条第二項の規定により政府が交付した国債の償還に関し必要な事項は、財務省令で定める。

第五十条 (国債の返還等)
1. 機構は、第四十八条第二項の規定により交付された国債のうち償還されていないものがある場合において、認定事業者の損害賠償の履行の状況及び特別資金援助の実施の状況に照らし、当該認定事業者に対する特別資金援助に係る資金交付を行うために新たに前条第一項の規定により国債の償還の請求を行う必要が生ずることがないと認めるときは、その償還されていない国債を政府に返還しなければならない。
2. 政府は、前項の規定により国債が返還された場合には、直ちに、これを消却しなければならない。
3. 前二項に定めるもののほか、第四十八条第二項の規定により政府が交付した国債の返還及び消却に関し必要な事項は、財務省令で定める。

第五十一条 (資金の交付)
 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合において、第四十八条第二項の規定による国債の交付がされてもなお当該資金交付に係る資金に不足を生ずるおそれがあると認めるときに限り、当該資金交付を行うために必要となる資金の確保のため、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。

第四款 負担金の額の特例

第五十二条
1. 認定事業者が、当該認定に係る特別期間内にその全部又は一部が含まれる機構の事業年度について納付すべき負担金の額は、第三十九条第一項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額に特別負担金額(認定事業者に追加的に負担させることが相当な額として機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める額をいう。以下この条において同じ。)を加算した額とする。
2. 特別負担金額は、認定事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、認定事業者に対し、できるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。
3. 機構は、特別負担金額を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
4. 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
5. 機構は、第三項の認可を受けたときは、遅滞なく、当該認可に係る特別負担金額を認定事業者に通知しなければならない。



第四節 損害賠償の円滑な実施に資するための相談その他の業務

第五十三条 (相談及び情報提供等)
 機構は、原子力事業者に対する資金援助を行った場合には、当該原子力事業者に係る原子力損害を受けた者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。この場合において、機構は、当該業務を第三者に委託することができる。

第五十四条 (資産の買取り)
1. 機構は、資金援助を受けた原子力事業者からの申込みに基づき、当該資金援助に係る原子力損害の賠償の履行に充てるための資金の確保に資するため、当該原子力事業者の保有する資産の買取りを行うことができる。
2. 機構は、前項の資産の買取りの申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該資産の買取りを行うかどうかを決定しなければならない。
3. 第四十二条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による決定について準用する。

第五十五条 (機構による原子力損害の賠償の支払等)
1. 機構は、資金援助を受けた原子力事業者委託を受けて、当該原子力事業者に係る原子力損害の賠償の全部又は一部の支払を行うことができる。
2. 機構は、前項の規定による支払を行うため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
3. 機構は、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律 [*1] の定めるところにより、同法第十五条に規定する主務大臣又は同法第八条第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事の委託を受けて、同法第三条第一項の規定による仮払金の支払に関する事務の一部 [*2] を行うことができる。


[*1] 平成二十三年法律第九十一号

[*2] 会計法(昭和二十二年法律第三十五号)に基づく支出の決定及び交付の事務を除く。






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