2011年7月10日日曜日

鹿男PART9

 このたびの「東日本大地震」にて被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、災害にてお亡くなりになられた方々のご冥福を、心からお祈り申し上げます。


 歴史は常に「勝者側」の視点で書かれています。したがって、事実の半分しか書かれていないと見做すこともできます。残り半分は第三者の視点で書かれた歴史書や、散在する「敗者側」の歴史書で補足することになります。そして、書かれた内容と実際の出来事とを、遺跡などの物的証拠や科学分析などによって裏付け、はじめて歴史は本当の姿を現すのでしょう。


歴史は事件の積み重ねである。


というのがワタシの持論なのですが、歴史学と警察の犯罪・事故捜査は、同質の作業とも考えられます。歴史は「ロマン」などを交えて語られがちですが、素人の真似事ならともかく、警察が犯人を「ロマン」で捜査することはありえない様に、歴史の真実も、「ロマン」を排除しなければ見えて来ないでしょう。

 ところで、日本における利権構造の正体とはナンなのか?つまり、既得権益とか呼ばれる類にはルーツ(根っこ)があるはずなのです。所謂、「地方の有力者」と呼ばれる家系の先祖は、その地方の豪族の末裔という家柄が殆どです。それも遥か昔からの。そういった「暗黙の利権構造」に縛られ続けているのが、現在の日本という国の実体の様に思えてなりません。

 そういった「暗黙の利権構造」を白日の下に晒し(大袈裟ですが)、「是は是、非は非」として、日本の社会全体を見直す為にも、「歴史の再検証」は必要不可欠な作業だとワタシは信じます。ひとりひとりが自分の立脚点(アイデンティティー)をシッカリ認識し、受け入れてこそ、そこから先の未来、これからの日本の未来が、明確に見えてくると信じるからです。それがワタシが「歴史」に拘る理由です。はい。
 
 で、ワタシの「鹿男」シリーズもパート8まで続いているワケですが、現在、藤原鎌足、不比等親子の出自で止まっている次第です。最大の疑問・・・


なぜ?奈良に鹿島(茨城)の鹿を招いたのか?


・・・の、理路と整然とした根拠がつかめず、半ば放り出した状態だったのですが、最近、「白村江敗戦と上代特殊仮名遣い」という本を知り、少し進展するかも知れません。

 日本の歴史を研究する上で避けて通れないのが、「日本書紀」と「古事記」なのは誰もが認めるところです。しかし、その「日本書紀」と「古事記」の正統性・・・と言うか、「証拠価値」そのものは真摯に検証されたのでしょうか?

 というのも、この本(白村江敗戦と上代特殊仮名遣い)の著者によれば、1970年代に入って「日本書紀」を中国語の専門家が分析したところ(「日本書紀」は漢文で書かれています)、正確な中国語で書かれた「α群」と、イイカゲンな中国語で書かれた「β群」に分かれていることを発見し、現在では、「日本書紀α群中国帰化人記述説」は、おおむね受け入れられているということです。

 そうなると、残りの「β群」を書いたのは日本人(倭人)なのか?というとそうでは無く、結論から先に言うと、「白村江の戦い」の敗戦後に、日本に渡来して来た「亡命百済人」が「日本書紀β群」を書いた。・・・と。

 その証拠?として著者は「日本書紀」の中に見られる、「上代特殊仮名遣い」を指摘しているワケです。「上代特殊仮名遣い」には日本語母音が8つ存在し、翻って現代の日本語は母音は5つ(あ・い・う・え・お)であることから、同じく8つの母音を持つ言語、「朝鮮語」を使う者たちが「日本書紀」作成に係わったとしています。

 さて、「古事記」と「日本書紀」となると、藤原不比等なワケです。天武天皇の命を受け、不比等は「記紀」の編纂に携わるワケですが、天武天皇は大の中国ツウでもあったことから、「記紀」の書官に中国帰化人を起用したとしても不思議はありません。それが「α群」の部分だろうと容易に推察できます。

 ではなぜ?全編を中国帰化人に書かせなかったのか?という疑問が生じます。記述の統一性、正確性を保つ為には、中国帰化人が一貫して編纂を行う方が理に適っているハズです。

 先の、「白村江敗戦と上代特殊仮名遣い」という本の中では、「日本書紀」作成に亡命百済人が携わったことをメインに取り上げているのですが、ワタシの興味は、中国帰化人と、百済帰化人の力関係にあります。ま、圧倒的に百済帰化人の方が数が多かったのは事実ですが、それでも天武天皇の庇護の下に中国帰化人が置かれていたならば、政治的な立場(社会的ステータス)は亡命百済人よりもずっと高かったと思われるからです。

 で、考えられる事は、「日本書紀」「古事記」の完成前に天武天皇が崩御していることから、編纂の途中で方針が変わった可能性も考えられます。つまり、中国帰化人が後ろ盾(スポンサー)を失い立場が弱まり、代わって百済帰化人が台頭・・・まあ、イケイケ状態になった。・・・と?

 そうであれば、百済帰化人の後ろ盾となったのは誰なのか?藤原不比等なのか?また、何故?百済帰化人に肩入れしたのか?が気になって、夜も眠れなくなってしまうワケです。はい。


でわっ!